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第73話

 幼い弟妹がいちどきに腕にぶら下がっても、小揺るぎもしないほど頑健だった肉体が、一年足らずの間に変わり果ててしまうなんて誰が予想しえただろう。  たとえば手の指だ。一本ずつ独立しているというより、文字通り枝分かれしてねじくれ、しかも爪は葉っぱを思わせる薄片に変じた。  もはや頭部を除いて温もりは失せた。だが人間性は微塵も損なわれていない。  その点が肝心で、 「おれは未来永劫、ラウルひと筋だ」 「まったく、おまえはロバ以上に頑固で、そこが可愛い……そうだ、頼みがある」  カイルがさっそく身を乗り出したところに、こんなおねだりをされる。 「チンポがもげるまでおまえを抱いておかなかったのが心残りだ。俺の指だと思って、あそこに指を入れてかき混ぜてみせてくれ」    試しに要望に応えた場面を思い浮かべると、汗が噴き出した。蜂蜜色の髪が縦横(じゅうおう)に空を切り裂く。 「無理、恥ずかしい、絶対に無理……」 「夜這いをかけてきたときは積極的だったくせに、つれないことを言うな」  ここ一番というときに切り札を出されては、ぐうの音も出ない。カイルは腕の間からラウルを睨み、それでいて花芯がそわつくのを感じる。  頼むと、たたみかけられたら断れっこない。  乞われるままに、すべて脱ぎ去った。枕元で膝立ちになり、襞を解き伸ばす。  視線でせっつかれて、嬉々として指を沈める。だってラウルがこうしてほしがっている、と胸の小鳥が朗々とさえずった。    くちづけに酔いしれること優に数百回を超えたころ。  樹皮状の膜が、凛々しい(おもて)を害しはじめた。

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