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第19話
「ついたぜ。プレオ」
エアカーを停車すると、彼は財布から無造作に入館許可書を取り出してイーグルへと手渡す。
「うわ画像しか見たことなかったけど、本物だ、すげえな。超わくわくする」
車のドアを勢いよく開けて、イーグルは外に出ると、古めかしい建物が目の前にそびえている。
ここは昔の資料でしか知らない場所。今そこにたっていることは、本当に奇跡だ。
大切そうに入館許可書を手にすると、イーグルは一緒にいこうと彼を振り返る。
「勉強するのが好きなのか」
「知らない知識を得るのは、ワクワクする」
「そっか。…………まあ、俺もそうだな」
彼は、イーグルの前をあるき勝手知ってる様子で医学館の入り口へと向かう。
医学館の受付の男は、彼の姿を見て見知っているのか軽く頭をさげて挨拶をする。
いくらなんでも、顔が広いっていっても……ちょっとおかしい。
受付の男に許可書を差し出して、ちらちら周りを見回しながら彼の後ろをついていく。
彼自身は何の証明も出さずに、顔パスのようだ。
「何が見てえんだよ?」
棚と機械が並ぶ部屋を見回しながら、イーグルを振り返って聞く。
「有機生体とか、自己組織とか培養とか系かな。昔の廃れた技術は、非文明地域で役立つから」
文明ありきの考え方しかない今の技術は、文化がない星ではまったくやくにたたなかった。
「なら、2階の右側の部屋だな」
「なんで分かるんだ」
さらさらとまるで全て把握しているように答える彼に、不信感をあらわにしながらイーグルは問い返した。
「スゲーから、俺」
すげーとかそういう問題じゃないんだけどな。
っていうか、かなり不思議すぎるだろ。
色々突っ込みどころは満載だったが、レアな資料を探しにその部屋にある目録を見るだけで色々と参考になりそうな資料がたくさんある。
ぜんぶから探したら、1日じゃ終わらないな。
「これと、これと、これは重要だぜ」
横からひょいっとディスクを手にして、イーグルに手渡す。
ディスクをリーダーにかけると探していた内容が表示されて、イーグルは目を瞠った。
「なあ……ジム。情報屋とかって嘘だよね」
たかが情報屋がこんな専門知識があるわけがない。
しかもこの中身をぜんぶ知ってるといいたげな様子だ。
「まあねぇー。嘘だなァー」
のんびりとした様子で、ディスクを手持ち無沙汰に手にとってる。
「…………医者?」
「まだ医大生だ、いずれは医者になる…………んだろうな」
歯切れの悪い口調。
何故、彼は隠していたのだろう。
エルシア・デューンの知り合いで、医大生で、同じ黒髪の綺麗な青い眼。
そうなったら、導かれる答えはひとつしかないだろう。
ひとつしか。
なら……なんで?
なんでこんなに、隠したがってるんだ。
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