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第21話

一瞬の浮遊感とホワイトアウトする衝撃と体が捻りつぶされるような苦痛が訪れ、次第に意識がはっきりとしてくるのを感じ、イーグルはゆっくり覚醒する。 どこに……落ちた……? 頭を打った痛みに眉を顰めて、のろのろと目を見開くと憤然と仁王立ちして、頭を抑えている青年の顔に視線がぶつかる。 「ガ………イ………」 思わずイーグルは幼馴染の本名を呼んでしまい、打ち付けた頭の上にずんと拳が振り下ろされた。 見回すと、彼の研究室なのか作りかけの器械や、薬品が所狭しと並んでいることに気がつく。 彼は科学者としての通り名ではない、本名を呼ばれることを特によしとはしない人間である。 「………デルファと呼べと何度言ったら分かる。人の上に落ちてくるとは、迷惑にも程がある」 落ちる場所を選べない装置を作った本人に憤慨されて、イーグルは思わず閉口した。 大体、位置がかなり正確すぎで、頭上直撃とかないだろ。 思った人間の頭上に落ちてくるとか、なさすぎる。 不満の色を浮かべたイーグルは、しかめ面のまま口を開き、 「あぁ、悪いな、でも、コレ人の頭の上に落ちる仕様っぽいぞ。デルファ、この機械は本当に時空ってやつを移動できた。凄いと思うよ」 指輪の形をしたその機械を外して、デルファーの手の中にへと押し付ける。 「なるほどな。でも、かなり危険な機械だ」 色々な未来の情報が、過去に漏れると大問題である。 一人の運命だけでなく、全宇宙の歴史が塗り替えられる。 「知っている」 手にした機械をデルファは床に落とすと、足でメリメリとふんずけてあっさりと破壊した。 「僕が欲しかったのは、僕の理論の正しさだけだ。過去など要らない」 バラバラになった金属の破片に、至極満足そうな笑みを浮かべて、デルファは言い捨てた。 「作った事が誰かに知れたら、かなりヤバイことになるからな」 砕けた金属の断片を見つめるイーグルにそう告げると、デルファは椅子に座りなおし再び途中にしていた実験に取り組み始めた。 結果だけあれば、経緯とか他はなんにも要らないのね。 コイツの考えそうなことだ。 ……まったく。 でも、知りたかった答えを見つけられた。 「ありがとう」 小さく、聞こえるか聞こえないかのような声で告げて立ち上がると、イーグルはその部屋を静かに出て行った。 『大切な者の為に尽くすことは、幸せで満足に充ちた物だと思わないか』 貴方にとって、それが真実だと知れたから……。 それだけで、俺は……満足だ。

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