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第一章 本心 1

午前七時 だんだん街に灯りが付き始めた。夕飯の時間だろうか、ビルの下はいつもより賑わっている気がした。 「それが君の生きる理由?」 「ええ、そうです。お兄さんは生きる理由、ありませんか?」 青年の言葉は何故か俺を反発させる。 「あるわけないだろ。君と俺では考えてる事が違う。たったそれだけの理由で生きようと思っただなんて、ほんとバカみたい。」 「それだけじゃありません。」 少し食い気味にそう青年は言う。まるで俺が言う事を予測していたかのように。 「さっきの理由を全て終わらせてから、もう一度この場に来ようと思っていました。帰ろうと思った時、貴方が扉を開けてここへ来ました。僕は咄嗟に扉の後ろに隠れました。」 もうあまり温度は感じなかった。それよりも。この前にいる青年の話にだんだんと引き込まれていく。 「普通に屋上に来ただけの人だと思って、帰ろうとした時、あなたがバカみたいって呟く声が聞こえました。振り向いてみたら、僕に対して言ってるわけではないと分かりました。」 さっきまでの光景がありありと自分の脳に映し出される。 「咄嗟に思いました。この人も僕と同じなのかなって。」 同じだなんて言わないで。君の方が…、よっぽど強い。 「あなたが飛び降りようとして、迷って。そんな姿を見て僕はさっきまでの自分を嘲笑いました。」 ははっ、と笑う青年は何か欠けているような、それでもって先ほどと違う意思を持っているような気がした。

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