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第一章 本心2
「この世界がバカみたいで、やってられないと思って死のうとしたのに、死のうとしていた僕が一番バカみたいだ。そう思いました。あなたを見て。」
「あははっ…。」
「へ…?」
俺は自然と笑った。なんだか楽になった。
「俺と君、なんだか似てるね。」
自分でも分かるくらい先ほどと打って変わって柔らかい声が出た。
「…一緒にされたくありません。」
青年も柔らかい笑みを浮かべる。
「そうだね、一緒じゃないね。」
「ええ、一緒じゃありません。」
暫くまた沈黙が流れる。少しだけひんやりした空気を感じた。
「でも、俺は君みたいに生きる理由が見つからないや。」
ごめんね。俺はそう付け足してまた目線を青年から元へ戻す。
「僕です。」
「……は?」
青年の声に思わず振り返った。とても真っ直ぐな目と目が合う。
「僕はどうですか?」
「それっ、どういう、」
「本当はもう一つ理由があったんです。お兄さん、1年前に就職って事は23歳ですよね?五つ下の男は恋愛対象外ですか?」
寒さのせいか、青年の顔はほんの少し赤く染まっている。困ったように笑う青年に俺は少しどきりとした。
「あ、えっと…。」
「あなたの生きる理由を僕にして下さい。僕はあなたに一目惚れしてしまったんです。…あなたに生きていて欲しい。互いに自殺しないように監視し合うっていうのは生きる理由になりませんか?」
意を決して真っ直ぐ俺を見つめる目、俺はそんな目が大嫌いで…大好きだ。
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