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第一章 答え
「あははっ。」
めいいっぱいの笑顔になったのは自分でも分かった。こんなに晴れ晴れとした心からの笑顔はいつぶりだろうか。
「君には負けた。」
そう言いながら俺は差し出されていた手を握った。繋がれた手を見て青年は安心したように笑う。
「僕の勝ちですね。」
「生意気…。」
そう言って2人で目を合わせて笑った。
「じゃあ帰りましょうか。」
あたりを見渡すと真っ暗になっていた。下に降りると灯りはたくさん付いているのだろうか。屋上だけ切り離された世界のようだった。
「今日は家に帰りたくないな。」
「……へっ?」
一瞬青年の目が丸くなる。
「あっ…。ごめんね、つい…。大丈夫、何でもないから。ふふ、まだまだ子供だね、顔真っ赤。」
「いや、あ、えっと…、僕の家来ます?一人暮らししてるので。全然片付いてないけど。」
「いいよ、無理しなくて、」
「無理なんてしてません。来て欲しいです。」
少し泣きそうになっているように見えるのは寒さのせいだろうか。
「本当にいいの?」
「ええ。大歓迎です。…あと、僕は子どもじゃありません。」
え────。
気付いた時には青年の唇が合わさっていて、
「もっと、生きてるって事、確かめたい。」
月の光に照らされた青年の顔は大人びていた。俺の頬がどんどん染まっていくのが分かる。さっきまで余裕が無かったのは彼の方なのに…。
「と、とりあえず降りようよ…。」
俺は照れ隠しにそう言って青年の手を引いた。
午後八時
街にはたくさんの人が行き交っている。友人や同僚と話していたり、誰かを待っていたり。
そんな中、手を繋ぎ少し急ぎ気味に歩く2人の姿が。人々はこの2人をどのように見るのだろうか。誰も先ほどの出来事を想像出来ないだろう。一人一人の人生なんてちっぽけだ。
バカみたい。
そんな言葉は、すうっと空に消えていった。
【第1章 出会】完
ネタバレ込みの注意書き↓
2章からかなりの頻度でR18になって行きます。そして、監禁束縛等のヤンデレ要素入ってきます。ご注意下さい。
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