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第ニ章 寂しさ2
「…環、飲み過ぎだ。」
そう言って、しかめっ面をしているのは迂回桜介 、俺の幼馴染だ。年上なことも相まって何かと世話を焼いてくれる。…それはもう焼き過ぎなくらいに。
「いいでしょ、俺はお客さんなんだから。ね、だから桜 くんもう一杯ちょーだい。」
「駄目だ。そんなに酒強くないだろお前。」
「えー、けち。」
「……。」
金曜日の夜は桜 くんの経営している小さな居酒屋でこうやってご飯を食べるのがお決まりなのだ。路地裏にひっそりとあるこの店は、地元の知る人ぞ知る隠れた名店であり、お客さんも顔馴染みばかりである。そして今日もいつもの顔ぶれが揃っていて。隣に座っていた常連の戸山さんが、ふふっと笑った。
「店長と環くんはいつも兄弟みたいに仲が良いね。」
「兄弟…。」
そう言われて、俺は顔が緩む。一人っ子の俺からすると兄弟なんてものに憧れを持っていて、桜 くんの事は兄の様に思ってきたから、第三者からそう言われて嬉しかったのだ。えへへ、と桜くんの方を見ると、桜くんは眉間に皺を寄せていて。
「そんな嫌そうな顔しなくても!」
「…ぁあ。いや、お前ほんと飲み過ぎ。もう今日はやめろ、後は水しか出さねえ。」
「えー。」
「あはは、お兄ちゃんの言う事は聞いていた方が良いんじゃないかな?環くん。」
「戸山さんまでひどい!」
俺がそう言うと、戸山さんは豪快に笑いながらお勘定を済ませて帰っていったのだった。
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