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第ニ章 寂しさ 3
「…まき、環、起きろ。」
肩を揺さぶられる感覚がして、目を覚ます。辺りを見渡したらまだ桜くんの居酒屋にいて、お客さんはみんな帰っていた。
「ごめん…寝ちゃってた。」
「ああ、もう締め作業終わったから。帰るぞ。」
「…ぁ、」
これもお決まりで、桜くんの締め作業が終わったら一緒に桜くんの家に帰って、そのまま週末泊まらせてもらっていたのだ。
だけど、恋人が出来た今、もうそんな事は出来ない。…あの時以来ずっと続いていた習慣だったから、言い出すのに緊張して今日は指摘通り飲み過ぎてしまったのだけれども。
もうすっかり酔いが覚めてしまったから、改めて少しドキドキしながら俺は切り出した。
「今日は自分の家に帰るよ。」
「ん?明日とか予定でもあんのか。それだったら…」
「いや、これから先、もう桜くんとはそういう事、しない…。」
ガタン…。
椅子がぶつかる音。
それは桜くんが少し強い力で俺の両肩を持ったから。
「…は?」
「おうくんっ…痛いっ…。」
「ぁ、悪りぃ…。いや、急になんでだよ?」
緩んだ力。けれど桜くんは俺の肩を持ったまま、真っ直ぐに、そして少し寂し気にそう聞いてきた。
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