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オフィスで仕事中。視線を感じ顔を上げる。 篠と目が合ったら、ウィンクされた。 アイツは阿呆か。 どこの世界にウィンクする奴がいるんだ。女の子は落ちたかもしれないけど俺は男だっての! あの日、酒に酔い、俺達は過ちを犯した。 男同士。 理解なんて出来ない。 …………大体、アイツ、女にモテるくせに。 誰か教えてくれ。 なんで酒抜けてるのに、俺は襲われたわけ? いつも爽やかなくせに…… あの豹変ぶり…… 滅茶苦茶、強引でアッサリ、二回目を奪われた。しかも、ちょっとだけ気持ち良かったとか、絶対に言えない!! いや。あんなに手が早い奴なんだ…… 記憶がないから二回目かどうかすら怪しい。 もしかしたら、何度も何度も…… 獲物を狙うみたいな目。 やらしい手つき。 男の顔をしてた篠。 カァ…… 頬が熱くなる。 ………………やめろ!!出てくるな!! 結局、立てなくなった俺は篠の家で休むしかなく、三食、飯を作ってくれた。悔しい事に絶品……超旨い。 体に負担がかかったせいか、その日はずっと眠かった。一日中、ウトウトしてしまい…… 夜、ようやく動けるようになり、泊まりを勧められたけどフラフラ家を出た。見かねた篠が家まで車で送ってくれた。 避けてやりたかったけど、流石、仕事が出来てモテる男。俺とは経験値が違う。 俺の仕事のミスをさり気なくフォロー。 残業も手伝ってくれ、忙しい時は飲み物や食べ物の差し入れ。 大変で疲れてる時こそ、気配りを忘れず、仕事は完璧。指示も的確。 …………同期として見習う事が沢山ある。 その後も部長からのセクハラを何度も止めてくれたり、助けてくれたりした。 正直なところ…… 微妙に俺は篠に頭が上がらなかった。 「ヒナ。昼、ガス□に一緒に行こうよ。」 キラキラの笑顔で言われる。 コーヒー休憩、昼食時に皆の前で爽やかに誘ってくる事も多い。 皆の前だと断れないと思って…… かなりの策士である。 「ハイ。エビフライあげる。ヒナ、好きだよね?顔色、良くないよ。ちゃんと食べて寝てる?」 心配そうな顔…… 悔しい事に悪い奴ではないんだ…… アレから一度も……何もないし…… …………このまま、なかった事にすれば。

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