11 / 13

10

ジワ…… 目に涙がたまる。 慌てて席を立ち、トイレに駆け込んだ。 ………………なんで。 涙なんて。 パッ。 トイレに入ってきたのは岩木だった。 慌てて涙を拭う。 「…………水谷。泣いてんの。」 「別に……」 泣いてた事を篠に言われたら言い訳出来ない。 なんとか誤魔化せ。 「さっきの話は……」 岩木に肩を掴まれて顔を上げた。 「…………岩木!」 篠の怒鳴り声がして、驚いて振り向く。 「アイツの気持ち知りたいなら、5秒我慢して?」 「え……?」 その瞬間。 岩木にギュッと抱きしめられた。 は? …………何コレ。 岩木に抱きしめられてる? 「岩木!ヒナに触るな!!」 怖い顔をした篠が岩木と俺を引き離した。 「篠?余裕のない男は嫌われるぞ? 顔が怖いって……く、くくっ!」 岩木は笑いを堪えてる。 意味が分からず篠を見つめる。 「ヒナ……さっきはごめん! 確かに賭けの話はされたけど、別に遊ぼうとか思ってたわけじゃなくて! 賭けに乗ったのは、その。岩木にバレて恥ずかしかったからで……本当に他意は無くて…… 元々可愛いな……と思ってたし、タイプだったんだ。俺、ヒナの事……」 必死に話す篠を見つめる。 「おいおい。同僚の目の前で告るつもりかよ。 しかも場所はトイレだし。色気ねぇな!」 岩木がツッコむ。 「さっきは照れてヤキモチ妬いて酷い言葉を吐いた。ヒナの事を傷つける位なら格好わるい告白でいい。」 篠が言い切った。 告……白……? 「やれやれ。からかってゴメン。 お邪魔虫は退散するよ。 上手くいくといいな。トイレでヤるなよ。」 「やらねーし。」 岩木は笑ってトイレから出て行った。

ともだちにシェアしよう!