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ジワ……
目に涙がたまる。
慌てて席を立ち、トイレに駆け込んだ。
………………なんで。
涙なんて。
パッ。
トイレに入ってきたのは岩木だった。
慌てて涙を拭う。
「…………水谷。泣いてんの。」
「別に……」
泣いてた事を篠に言われたら言い訳出来ない。
なんとか誤魔化せ。
「さっきの話は……」
岩木に肩を掴まれて顔を上げた。
「…………岩木!」
篠の怒鳴り声がして、驚いて振り向く。
「アイツの気持ち知りたいなら、5秒我慢して?」
「え……?」
その瞬間。
岩木にギュッと抱きしめられた。
は?
…………何コレ。
岩木に抱きしめられてる?
「岩木!ヒナに触るな!!」
怖い顔をした篠が岩木と俺を引き離した。
「篠?余裕のない男は嫌われるぞ?
顔が怖いって……く、くくっ!」
岩木は笑いを堪えてる。
意味が分からず篠を見つめる。
「ヒナ……さっきはごめん!
確かに賭けの話はされたけど、別に遊ぼうとか思ってたわけじゃなくて!
賭けに乗ったのは、その。岩木にバレて恥ずかしかったからで……本当に他意は無くて……
元々可愛いな……と思ってたし、タイプだったんだ。俺、ヒナの事……」
必死に話す篠を見つめる。
「おいおい。同僚の目の前で告るつもりかよ。
しかも場所はトイレだし。色気ねぇな!」
岩木がツッコむ。
「さっきは照れてヤキモチ妬いて酷い言葉を吐いた。ヒナの事を傷つける位なら格好わるい告白でいい。」
篠が言い切った。
告……白……?
「やれやれ。からかってゴメン。
お邪魔虫は退散するよ。
上手くいくといいな。トイレでヤるなよ。」
「やらねーし。」
岩木は笑ってトイレから出て行った。
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