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第11話 独り占め 4

 すっと天井に向けて手を伸ばし、彼の背中を想像すると、胸のあたりがきゅっと締め付けられたみたいに苦しくなる。 「どうして同じ歳に生まれなかったんだろう。そうしたらこんなに遠くないのにな」  たった二年、されど二年。その差がこんなにも大きく広い溝を僕と鷹くんのあいだに刻む。こうして会えなくて寂しいなんて思うのは鷹くんだけだ。顔が見たい、声が聞きたい、触れたい。  ぼんやりと鷹くんのことを考えていたら、居眠りをしていたようで、目を開けたら室内が薄暗くて、何度も目を瞬かせてしまった。カーテンを閉めていないから、月明かりや外灯の光が射し込んで薄ら明るい。身体をごろりと転がし時計の見える位置まで移動して壁掛けのそれを見ると、十九時半だった。  おそらく夕食前に母親がやって来ただろうが、声をかけても返事がないので諦めたのだろう。以前に許可なく部屋に入られるのは嫌だと言ったので、返事がない時はいるのがわかっていても勝手に扉を開けてくることはなくなった。基本的に僕は相手に対する要求は多くない。だから嫌だと言うことは余程のこと、という認識が母にはあるのだろう。 「まだいるのかな」  兄やその友人らしき二人。大学に入ってから出来た新しいお友達という奴だろう。高校時代もよく色んな友達を連れてきては夕飯を一緒に食べていた。そういうところは鷹くんと明博は似た雰囲気の持ち主なのだろう。人が自然と寄ってくるタイプだ。群れるのが嫌で友達と呼べる人物もいない僕とは正反対。  少しお腹が空いてきた。しかし下りていって明博たちに捕まるのは嫌だ。けれど意識し始めると身体は正直で、終いにはぐぅと情けない音が腹のあたりから聞こえてきた。 「どうしようかな」  お腹は空いたが賑やかな場所に行くのは嫌だ。頑固で意固地――どうして僕はこんな性格なのだろうか。兄である明博もそうだが母や父もどちらかと言えば社交的でオープンな性格だ。けれど僕だけが内向的で大勢の人を嫌う。

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