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第12話 独り占め 5
歳が過ぎてからの子供だから甘やかされたかと、子供にしては酷くひねくれた考えが浮かんでしまう。
「なんだ起きてるじゃん」
ふっとため息をついたのと同時か、部屋の扉がなんのためらいもなく開かれて、それと共に頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。その声に僕は咄嗟に顔を反らして声の先へ視線を向ける。逆さまに見えるその姿に僕は何度も目を瞬かせた。
「飯、食わないのか? おばさん心配してるぞ」
扉のほうに頭を向けていたので、真上から覗き込むように顔を見下ろされている。その視線に何故か反射的に頬が熱くなった。
「鷹くん」
名前を呼んだらなんだか胸がドキドキとまでしてきた。そしてそれと共に安堵にも似た温かい気持ちまで芽生えてきて、そんな感情の変化に驚きと戸惑いで頭が少しパニックに陥る。
「あ、寝てたのか? 寝ぼけてる?」
いつまで経っても起き上がらず顔を反らし見上げたままの僕に、逆さまの鷹くんが首を傾げた。そんな何気ない表情にまで胸が高鳴ってしまう。
むくりと起き上がった僕は立ち上がり振り返ると、僕よりも二十センチくらい背の高い鷹くんの腰あたりに思いきりよく抱きついた。唐突な僕の行動に肩を跳ね上げて驚いたようだが、振り払われることはなく胸元に頬を寄せ僕は更にしっかりと抱きついた。
「鷹くん二日も僕のこと放っておくなんて酷いよ」
「はあ? たかだか二日だろ」
「違う、二日もだよ」
離れていた時間を埋めるように頬をすり寄せ抱きついている僕に、鷹くんの呆れたような声が頭上から聞こえてきた。けれどそんな反応はいつものことなので、気にせずに目の前にいる鷹くんを思いきり僕は堪能する。
「毎日会いたい」
「なに馬鹿なこと言ってるんだよ。友達と遊べよ」
「鷹くんがいい」
それ以外いらない。周りにいるほかの奴らと一緒にいたってなにも楽しいことはない。それくらいなら鷹くんを待って一人でいるほうがずっといい。
「そんなことばっかり言ってるから友達が出来ないんだろ」
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