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第21話 独占的 2-2
「今日はなんと! ビーフカレーだ!」
「珍しい」
「特売で牛肉が安かった」
「んふふ、鷹くんの作るカレーなら、格安チキンカレーでも美味しいけどね」
少し重たい金属製の蓋を持ち上げれば、鍋の中にはとろりとしたカレーがたっぷり入っている。鷹くんの作るカレーはスパイスを独自にアレンジしたもので、正直カレーと言ったらこれしか食べたくないくらいだ。
「ご飯、先に食べる」
「目玉焼きは何個食う?」
「二個」
「よし、あっちで待ってろ」
頭を撫でられてくしゃりと髪が乱れる。でも目の前にお日様みたいな笑顔があるから、子供扱いされたことは気にしない。それにいつまでも支度の邪魔をしていても仕方がないので、言われるままに身体を離して部屋へと足を向けた。
扉を開けば家を出る前よりも広々とした室内に迎えられる。散らかっていた本も服も綺麗に片付けられて、ベランダを覗けば洗濯物が風に揺られていた。今日は一段と綺麗に掃除をしたものだ。ベッドの布団も乾燥機をかけたばかりなのか、ほんのり温かい。
すっきりした室内を見回し、鷹くんがやってくる前に制服を脱いで部屋着に着替えた。脱ぎ散らかしたものにあとで文句を言われるかもしれないが、気にせずにカーペットの敷かれた床にごろりと寝転がる。両手足を思いきり伸ばせば、ようやく大きく息が吸えた。今日も一日、十二分に疲れた。
家に帰ってきた安心感か、少しウトウトしてしまう。
「臣? 寝てんのか? 飯の用意できたぞ」
近づいてくる気配やテーブルに皿を置く音も聞こえていたが、身動きできなくて低い唸り声しか出なかった。
「相変わらずバイト忙しいのか?」
「んー、まあ」
「接客業なのに人嫌いのお前にしてはよく続いてるな。やれば出来るじゃん」
「人間社会に溶け込むのも結構必死なんだよ」
「ふはっ、人間社会って、お前妖怪かなにかかよ」
吹き出すように笑った鷹くんは転がる僕を足先で小突きながら、ベッドの上に散らかした制服をまとめてハンガーに掛けてくれた。そしてなぜかおもむろに僕の背中に乗り上がってくる。突然感じた重みに身体をひねって後ろを見れば、ぐっと親指の腹で肩甲骨の辺りを押された。鈍い痛みを感じるものの、それはどちらかと言えば痛気持ちいい感覚。そのまま身を任せたら、鷹くんはゆっくりと背中をマッサージし始めた。
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