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第23話 独占的 2-4

 必死でこらえる顔を見ていると、色んな感情が腹の中で渦巻いていく。都合の悪い時だけご機嫌取りをして、僕の顔色を窺う鷹くん。だけどもう彼の中ではお伺いを立てる前から決定事項で、いつだって僕は外に放り出される。  いつも僕が力で彼を押さえつけているように見えて、実際のところはするりするりとかわされて、手の内からあっさりといなくなってしまう。 「どうしたらずっと傍にいてくれるの?」 「和臣?」 「どうしたら俺のものになってくれるんだよ!」  振り上げた手に身をすくませるそんな姿を見てしまうと、込み上がった怒りの矛先がわからなくなる。おびえを含んだ眼差しを向けられれば、感情が一気に冷めていく。持ち上げた手は力なく下ろされ、カーペットの上で握りしめられた。 「臣、ごめん。やっぱり断ってくる」 「いいよ、もう。行かないと後悔するでしょ。あとから僕のせいにされても嫌だし」  押さえつけていた肩を離し身体の上から退くと、のろのろとテーブルの前に座る。まだ温かいカレーをスプーンでかき回して、山盛りにしたそれを口の中に押し込んだ。こんな時でも美味しいものを食べると舌は正直に味覚を認識する。ひたすらに黙々と口を動かしていれば、こちらを窺う視線が近づいてきた。  すぐ隣に正座して座った鷹くんは、じっと僕の横顔を見つめている。 「なに?」  もの言いたげに見つめてくる顔を横目で見れば、それることなく視線がぶつかった。いつもだったら怒っている僕におどおどとした態度を見せるのに、今日はやけにまっすぐとした目をしている。なんだかそれが気に入らなくて、そらすように目を伏せた。 「和臣」 「だからなに?」  目を合わさないままぶっきらぼうに言い放つと、ふいに伸びてきた手が僕の左手を掴んだ。ぎゅっと手を握られて、なんだか僕が悪いことをしたみたいな気分にさせられる。これは約束を反故にした鷹くんのほうが悪い。そう思うのに、束縛のひどい自分と周りの板挟みになっているんじゃないかなんて考えてしまう。  大人になるっていうのは、好きとか嫌いだけじゃどうにもならないことが多い。 「ごめん、和臣」 「もういいって」

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