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第25話 独占的 3-1

 僕は生まれてからいままでずっと、親にも周りにも手のかからない子だと言われてきた。自分のことが自分で出来ない物心つく前も、夜泣きも騒ぎもしない大人しい子だとありがたがられていた。それに比べたら明博なんてね、とかよく兄と比べられていたっけ。人間ってさ、手間がかかる子ほど可愛いんじゃないの?  気にかけた分だけ愛情が移るって言うでしょ。あの三人が社交的で、僕だけ内向的なのはそういうところも要因している気がする。だからと言って親に愛情をかけてもらっていないとは言わない。僕の言い分は否定したりしないし、物事を強要されたりしたこともない。いまもこうして一人暮らしをさせてもらっている。なんでも思うままに手に入るこの現状が、いいのか悪いのかはわからないけど。  でもそんな世界で、初めて思い通りにならなかったのが鷹くんだ。大人しくしていればすぐにどこかへ行ってしまうし、言葉にしなければ聞く耳を持ってくれない。まあ、言ったところで八割くらいは聞いてくれないんだけど。それでも鷹くんの持つ引力は僕を惹きつけて放さなかった。もしかしたらそれは、ひな鳥の刷り込み効果なのかもしれないが。 「僕は、鷹くんがいればそれだけでいい。もし僕のことがいらなくなって捨てられても、僕は鷹くんから離れないよ。だから本当に必要なくなったら、僕の息の根が止まるくらいに僕の気持ちをへし折って」 「……お前を、そんなにしちまったのは、俺なのかな。和臣、お前さ。前はもっと笑ってた。最近はあんまり笑わなくなったよな」 「去年は楽しかったよ。鷹くんといっぱい一緒にいられたし。いまだって、離れてた頃に比べたら」 「全然平気じゃないだろ。いっつもしんどそうだ。でもお前はどんなことがあってもついてくるから、俺はそれに甘えきってるんだ。お前は絶対に俺を裏切らないもんな。だからお前が俺を繋ぎ止めようとする感情が怖いけど、どこか安心もしてる」  ひどく切なそうに僕を見つめるけど、よっぽど鷹くんのほうが苦しそうだ。そんな目で見られるとどうしたらいいのかわからなくなる。僕と一緒にいるのが辛いみたいに思えてしまう。

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