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第26話 独占的 3-2
「ねぇ、鷹くん。鷹くんは僕のこと好き?」
「好きだよ。俺はお前が好きだ。いらないなんて思ったことない。だけど俺を好きなお前はあんまりにも可哀想だ」
「……かわ、い、そう?」
掴んだ左手をきつく握りしめて、僕の背中を震える手で抱きしめて、鷹くんは静かに涙をこぼした。頬が触れる肩がじんわり温かなもので濡れていくのがわかる。でも僕はその涙の意味がよくわからなかった。鷹くんを好きな僕が可哀想? それがなぜなのか、どうしてもわからない。
「鷹くん」
「和臣はたまに凶暴だけど。駅でご主人様の帰りを待つ忠犬みたいだな」
「え?」
鷹くんの口から吐き出された言葉に、ひどく息苦しさを感じた。帰ることのない主人の帰りを待つあの犬が僕なのだとしたら、それは可哀想なんじゃなくて、哀れと言うほうが近い。
自分のところに帰ってこないことにも気づかずに待ち続ける。それは手の届かないものに必死で手を伸ばしているようにも見えるだろう。恋しい恋しいと思いながら、僕は無駄なあがきをしてるということなのか。
鷹くんの目に映る僕は、そんなに憐憫の情を誘うほど惨めに見えているのか。そう思ったらなんだか胸が痛くて仕方がなかった。
「やめて、俺を哀れまないでよ。このままでいい、これ以上は望まないから、鷹くんにまで見下ろされるのは、嫌だ」
息がうまく吸い込めない。声が掠れて情けないくらいに震えた。
選び取る答えを間違えれば、いつもみんながひどく哀れんだ目で僕を見下ろす。どうしたの? なにかあったの? 和臣くんらしくないね。そうじゃないよね。ほら、やり直してみようか。
きっと次はうまく出来るよ、大丈夫。――それは他人に干渉されないため、いい子でいるため。そのためにいつだって手に握った鮮やかな色彩が他人の正しさに塗りつぶされていった。
ずっとそんな生き方しか知らなかった。それでも僕は光る一番星に心を救われたんだ。
それなのに目の前のものがわからなくなるくらいに鷹くんを好きでいることは、見ているのが可哀想になるくらい僕らしくない? みっともなくすがる僕はそんなに哀れ? 僕はまたなにか選択を間違えたのだろうか。
――違う、僕は間違えたんじゃない、ただ僕はまっすぐに人を愛しただけだ。
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