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第28話 独占的 3-4

 鼻をすすり、ぐずつく僕の頭を優しく両腕で包み込んで、鷹くんは優しい声で何度も好きだと囁いた。いままでこんなに言葉にしてもらったことはなかったから、夢ではないと確かめるようにきつく鷹くんを抱き寄せてしまう。 「和臣の馬鹿力。苦しいって。ちょっとは手加減しろよ」 「目が覚めて、なにも残ってなかったらどうしよう」 「もしなにも残ってなかったら、何回だってお前の中に俺の気持ち詰め込んでやるよ」  温かい両手が僕の髪を梳いて、頬を撫でる。それに誘われるように顔を上げたら、目尻に口づけられた。浮かび上がった残骸を吸い取るように何度も触れて、目を閉じるとまぶたにもそれは降り注ぐ。羽根が触れるようなその感触が嬉しくて、気づいたら口元がほころんでいた。 「臣は、笑ってるほうが可愛い」  ゆっくりと目を開けば、眩しそうに目を細める鷹くんの笑顔があった。視線が合うとそっと唇が重なる。ついばむように触れたそれはなんだか甘くて、胸がじわじわ温かくなってきた。ああ、これが幸せってやつだなって、変に納得してしまう。 「鷹くん、来週末は一緒に買い物に行こう」 「ん? なにか欲しいものでもあんのか?」 「今週行くつもりだったけど、プレゼント一緒に買いたい。それと一緒にご飯食べて、鷹くんの好きなところに行こう」 「……お前、人混み苦手じゃん。無理しなくていいんだぞ。家で飯食うだけでも」 「当たり前のことがしたい、鷹くんと。少しずつ慣れるから。あ、乗り物酔いするから遊園地とかは無理だ」  ざわめきの中を歩きたいわけじゃないけど、人並みに恋人らしく、二人で外を歩きたいって思う。いつもこの狭い部屋の中でしか会うことが出来ないから、もっと違う鷹くんが見てみたい。いきなりなんでも楽しくなるとは思わないが、相手が鷹くんならきっと少しは面白いと思えるかもしれない。 「あー! 畜生!」 「鷹くん? なに? どうしたの?」  じっと返事を待ちながら見つめていたら、大きな声を上げて鷹くんはいきなり上を向いた。そして両手で顔を覆うとなにやらうんうんと唸り始める。

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