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第29話 独占的 3-5

「可愛いが過ぎる!」 「は?」 「普段つんけんしてるくせになんだそのデレは! だから人に紹介できねぇんだよ! 俺のこと好き過ぎるのバレバレじゃん!」  頭を抱えながら鷹くんはそのままバタリと仰向けに倒れた。そしてカーペットの上で身もだえるように身体をよじっている。少し呆然とそれを見つめてしまったが、僕は挟み込むように両手をついて鷹くんを見下ろした。 「ねぇ、僕が鷹くんを好きなことバレたら駄目なの? 友達に紹介してとは言わないけど、わざと隠すのは嫌だよ。いままでだって平気だったでしょ。みんな兄離れできない弟くらいの感覚だったじゃない」  鷹くんにべったりな僕に、友達も周りの人間もみんな呆れはしていたがいつもの光景、くらいの感覚だった。幼馴染みに懐いている、それこそ犬のような存在だ。普通の視点から見れば、そこに恋愛感情があることはそうそうわからない。 「あ、あの時と、いまとは違うんだよ」 「なにが違うのさ」 「俺が、お前を、好きな気持ちの大きさが! お前の気持ちがバレたら俺の気持ちまでバレるだろ!」 「え?」  むず痒そうに口を曲げた鷹くんに驚いて僕は間の抜けた声を上げてしまう。まさかそんな答えは予想もしていない。鷹くんが僕のことを好きな感情、それに大きさがあるなんて、そんなこと考えたこともなかった。 「いまは前より僕のことが好きってこと?」 「悪いか!」 「え? 悪くないけど、ほんとに?」 「こんなことで嘘ついてどうすんだよ!」  眉間にしわを寄せて怒るその顔を、思わずまじまじと見つめてしまった。でもそれと同時に胸がキュンとして、口元が意志とは裏腹にふやけて歪んでしまう。  鷹くんが、僕を好き。前よりもずっと好き。それを心の中で何回も繰り返して、覆い被さるように鷹くんに抱きついてしまった。ずっと抱きしめてきた彼がいままで以上に愛おしくてたまらない気持ちになる。  持ち上げられた手が、僕の背中をぎゅと強く掴む。それだけで鬱屈としていたものがすべて消し飛んだかのような、晴れやかな気分になった。

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