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第31話 独占的 4-2
色んなことを譲歩したのだとしても鷹くんのまっすぐな性格だ、嫌なことを無理矢理させているわけではないとは思えた。
「まあ、半分はそういう気持ちがなかったわけじゃない」
「うん、鷹くん結構そういうところあるよね」
「でも和臣はいつだって正直だったし、悪い気がしなかったんだよ。頭がいい、顔もいい、背が高くて見た目が抜群によくて、人嫌いで素っ気ないけど人当たりは悪くない。そんな男が自分に夢中になってるのはちょっとした優越感だよな」
「ふぅん、鷹くんでもそんなこと考えるんだ」
「人間って割と即物的な生き物だ」
最初の気持ちに打算が込められていたのだとしても、僕という面倒くさい男と向き合ってくれたのだから、彼なりの考えはあったのかもしれない。平気で約束はすっぽかすし、僕より友達を優先するし、言うことはあんまり聞いてくれないけど。それでも僕がどうしても傍にいたいと思う時は傍にいてくれた。
「面倒くさいとは思わなかった? 僕って自分から見てもかなり重たいし、束縛きついでしょ」
「お前の性格は子供の頃から慣れてるし、面倒くさくはないけど、キレた時は正直言って怖い。でもそれって大抵、我慢して我慢し続けた結果ってことが多いから、なんとも言えねぇなぁ」
「怒られる自覚はあるんだね」
「俺のほうがよく俺みたいなのでついてくるなって思う」
「だって、鷹くんしか見えないんだもん」
抱きしめていた身体をゆっくりと離して、じっと僕を見つめる鷹くんに優しく口づけを落とした。唇が離れると、それに引かれるように身体を起こした鷹くんが僕に手を伸ばして頬を優しく撫でる。その手に自分の手を重ねれば、眩しそうに目を細められた。
「和臣のそういうとこ、嫌いじゃねぇよ」
「今日の鷹くんは正直だね。いつもそんなことほとんど言ってくれないのに」
「恥ずかしいだろ」
「鷹くんのそういうところ、嫌いじゃないよ。じれったくもなるけど、可愛いって思う」
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