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第32話 独占的 4-3

 期待を孕んだ目で恥じらう素振りを見せられると、支配欲が広がってその感情をこじ開けたくなる。抵抗されればされるほど、高揚してしまう。内側を暴いて奥底をドロドロに溶かしてしてしまいたくなるのは、僕が歪んでいるからかもしれないけど。 「友達に紹介してもらえなくてもいいよ。でももう少し会いたいし、声も聞きたい。せめて返事が欲しい」 「いまは忙しいから、そんなに時間は作れねぇけど、気をつける。それと、べ、別に、紹介できないわけじゃねぇよ」 「したくないんでしょ?」 「そ、それは、お前を見たら、みんなに俺がお前のことばっかり考えてるのが、バレるから」  ふいに視線をそらして俯いた鷹くんは頬を染めてごにょごにょと言い訳を連ねる。だけどその先が聞きたくて、その目を追いかけてまっすぐに見つめた。すると僕の眼差しにぐっと言葉を詰まらせて彼は口を引き結ぶ。それでも見つめ続けていれば、大きなため息が吐き出された。 「俺のデザインは悪くないけど着る人間を選ぶって言われんだ。でもいつもイメージがぶれねぇから、誰かモデルがいるんだろうって」 「それが僕? でもそのくらいならそんなに気にしなくてもいいんじゃないの? 決まったイメージを持ってる、そういう人だっているでしょ」 「レディースデザインはともかく、メンズはどれを描いてもイメージが明確過ぎるから、逆にその相手が気になるとか言い始めて」 「もしかしてそれを全力で拒否しちゃったの?」 「し、仕方ねぇだろ! 嫌だったんだから! だってあいつら絶対目の色変わる」  首まで真っ赤にして顔を上げた鷹くんの目はちょっと潤んで見えた。泣くほどそんなに嫌だったのだろうか。でも周りがあれやこれやとはやし立てるのは高校時代からよくあることだったと思うけど。 「鷹くんは僕を独り占めしたいの?」 「お前は俺のもんだろう!」 「え?」  勢い込んで近づいた鷹くんに両腕を掴まれて思わず目を瞬かせてしまう。今日は随分と思いがけない言葉をもらえる日だ。

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