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第33話 独占的 4-4

 こんなに一気に色んなものを与えられたら、普段からあふれっぱなしの感情が洪水を起こしてしまいそうだ。けれどいますぐにでも押し倒してしまいたくなる気持ちは押しとどめて次の言葉を待った。 「見せびらかしたい気持ちもある。だけどお前を色目で見られんのは嫌だ」 「僕は浮気しないよ。今日もバイト先の女の子に好きだって言われたけど、断った」 「臣って女の子が駄目なのか?」 「どうかな? でも昔からあんまり興味ないな。それに僕は鷹くんしか好きになったことないから」 「お前のそれって刷り込みみたいなもんじゃねぇの? もっと臣のことわかってやれるやつが現れたら、目移り……」  ひどく寂しそうに言葉を紡ぐ鷹くんの声を遮るように、僕は目の前の唇を塞いだ。驚いた顔をして目を見開くのが見えたけれど、次の言葉を押し込めるみたいに舌で口内をまさぐった。そうすれば息を詰めていた鷹くんは掴んだ両腕に力を込めて、一生懸命にそれに応えようする。時折喘ぐように声を漏らしたが、それでもなおしつこいくらいにむさぼり尽くす。息を吸い込む隙も与えないくらい口づけたら、鷹くんの目に涙が浮かんだ。  わかっている。この感情のはじまりがなんだったか。言われなくてもわかっているんだ。でもそれでも、僕のこの想いは多分一生消えない。 「僕は鷹くんが好き。それ以外、それ以上の気持ちはないよ。だから僕がほかの人を好きになるなんてない。それより僕は、鷹くんが心変わりするほうが怖い。やっぱり女の子のほうがいいなんて言われたら、僕は勝ち目がないでしょ」  普通の幸せがいい。そんなことを言われたら僕はもうその手を離すしかなくなる。本当は繋ぎ止めて、閉じ込めて、ほかの誰かなんて目に入らないようにしてしまいたい。だけど僕は鷹くんには笑っていて欲しいと思う。幸せでいて欲しいと思うんだ。

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