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第34話 独占的 4-5
「ずっとは一緒にいられないかもしれないってことくらい、わかってる。簡単に僕への感情を誰かに打ち明けられないってこともわかってる。でもいまだけでいいから、僕を否定しないで傍にいて」
「和臣」
「お願い。いまは僕のことだけ好きでいて」
「なあ、臣。俺には夢があるんだ」
「え?」
ふいに僕の両手を掴んだ鷹くんはまっすぐな視線で優しい笑みを浮かべる。その顔を訝しげに見つめると、ぎゅっと手を握ってそれを胸元に引き寄せた。
「俺は将来、ブランドを立ち上げてショーに出たり、店を開いたりしたい。いまもそのために必死で勉強してる。だからいつかその夢が叶ったら、ブランドの専属モデルはお前がいいって思ってる。和臣に俺の服を着てもらいたいんだ。いまもお前のために作ってる。その意味、わかるよな?」
「……鷹くんの、将来に、僕はいるの?」
「そうだ、この先もずっとだ」
「ずっと」
ぽつりと呟いた僕に鷹くんは唇を寄せる。小さなリップ音がして離れたそれを視線で追えば、至極満足げな顔が目の前にあった。その笑顔を見ているとまた胸がじわりと温かくなってくる。この先の未来、鷹くんの道の先。そこに自分がいるのだと言われて、ひどく嬉しかった。瞬きをしたらぽたりと涙が落ちる。
「じゃあ、僕はその仕事に就くよ」
「は? 駄目だって、専属つってんだろ」
「でもずぶの素人がやったって箔がつかないじゃない」
「それは、そうかもしんねぇけど」
「外に出るとよく声はかけられるんだ。いままで興味がなくて名刺とかもらってもそのままだったけど。今日も確か、ほら、鷹くんがいつも買ってるファッション誌の」
「え!」
むっつりとして顔をしかめていた鷹くんの声が急に明るくなった。素直過ぎるその反応に僕も思わず笑ってしまう。こんなに喜ぶなら帰ってきた時に話せばよかった。
「名刺が制服のポケットに入ってたはず」
やんわりと手を解いて立ち上がると、掛けられた制服のポケットを探る。急いでいたからちょっと握り潰してしまったけど、名前に覚えがあったので捨てずにいた。
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