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第2話
「……ごめん、なさい。お邪魔してしまって」
「良いんだよ。泣いている君を放って置けないから」
結局、心優しい男性の好意で今は家にお邪魔させてもらっている。男性は、俺が泣き止むまで背中をさすってくれて、やっと泣き止むと目が腫れないようにと冷やしたタオルで目元を冷やしてくれた。
温かいお茶まで持ってきてくれて、面倒見のいい男性についキュンとしてしまう。 男相手にキュンだなんて、おかしいとは思うけれど今は何もかもが麻痺しているんだと思う。
「俺、司波 日向 。君は……あずさ、て読むの?それ」
「あ……はい。高良 梓 といいます」
司波と名乗る男性は、俺が首に引っ掛けていた社員証を指さした。遅くまで残業していたせいで外すのをすっかり忘れていた。社員証をプラプラ下げて帰ってきたのだと思うと恥ずかしくなる。
だけど司波さんは「そんな日もあるよね」と励ましてくれた。この人は何処までもいい人だ。
見る限り、俺より若いと思う。23~25歳といったところか。顔はとても綺麗だと思う。例えるなら、少女漫画に出てくる王子様だ。ほわほわした、日向という名前にピッタリの暖かい雰囲気。
「梓さんは、なぜこんな夜中に猛ダッシュしてたの?」
「あ……、実は……」
あまり話して気持ちいい話ではないが、とくかく誰かに話したかったと言うのもあるし、司波さんなら、話せると思ったのだ。
数ヶ月前からのストーカー行為、嫌がらせの事を司波さんに話すと、綺麗な顔が歪んでいた。 やはりあまり聞きたくなかっただろう。こんな気持ち悪い話をしてしまって申し訳ない。
「梓さん、すごいよ。ずっとそれに耐えてたの?俺だったら無理だ」
「はは……、ただ、頼れる人がいなくて……誰にも話せなかっただけですよ」
両親の反対を押し切って一人で上京してきて、今更心配を掛けるような相談は出来ない。 元々口下手で友達もいなかったから、会社でも話せる友達という人はいなかった。
だから、司波さんに初めて悩みを聞いてもらってスッキリした。
「じゃあ、俺は梓さんにとって頼れる人ってわけだ」
「あっ……!ごめんなさい!嫌ですよね!俺なんかにそんな事言われて……!」
「いや、嬉しい。……なんだろう。 梓さんといると守ってあげないとって思うんだよね」
「はぁ……」
そう優しく微笑む姿はまさに紳士で。守ってあげたいだなんて、まだ出会って数時間だが俺はそんなに頼りないだろうか。
……知らない人の前で大号泣するくらいだ、頼りないかもしれない。大の大人が号泣するなんて恥ずかしい所を見られてしまった。
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