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第11話

 先程の紫の衣装も良く似合っていたが、純白の絹が滑らかな素肌をさらに引き立てていた。しかも先程の行為の――神事としての聖なるお役目という側面が多分キリヤ様の認識なのだろうが、それが妙にファロスの胸をかき乱してしまっていた――余韻で紅色に染まった素肌に良く映えていた。しかし、戦神は男性神なのに、裳裾まで長く垂らした優美な肢体が若木のようなしなやかな蠱惑に満ちていた。  そして、一番の違和感は月を象ったとしか思えない額飾りだった。キリヤ様の繊細で怜悧な美しさには良く似合っていたものの、銀の精緻な作りの「月」を付けているのは何故なのだろうと思う。 「戦神は太陽の化身とも言われておりますので、てっきり黄金の太陽の額飾りを着けて来られるかと思っておりました……。いえ、良くお似合いですが」  壁の地図よりもファロスを惹き付けるキリヤ様の気高く崇高な感じの美しい顔やしなやかな肢体を無遠慮にならないように気を付けながらそう言った。 「戦は――ファロスも存じているだろうが、その場その場で変わる。その潮目を良く見極めないと勝利は覚束ない。  勝利した暁には確かに太陽の輝きこそが相応しいが、戦という臨機応変さが求められる場所では満ち欠けが有る月が象徴なので。  神殿の公の場所では確かに太陽の印を着けるのが定めだが、聖神官の禊――そして戦神様に選ばれた人には尚更に――本来の姿を見せることになっている」  先程の聖神官室での厳かさと淫靡さとはうって変わって何だか親しみめいた感じを受ける口調と笑みが印象的だった。そして精緻な細工で月を象った銀の額飾りもとても似合っている。 「さて、そなたは『出来るだけ戦死者を出さないように』戦を進める積もりだそうだが、具体的には?」  先程の神官見習いが置いて行った皿の数々をテーブルの上に手際良く並べながらキリヤ様はファロスの表情を興味津々といった感じで見ていた。  その凛とした瞳の煌めきはまさに月の光のように美しかったが。 「戦死者が出れば出るほど、国は疲弊致します。確かに大人数で攻めるのが鉄則ではありますが、しかしその軍勢はいわば、おとりというか敵国同盟への示威としてしか使いません。  圧倒的な兵力でいわゆる力で攻めるのであれば、参謀など必要のない戦になると考えました」  ファロスの声が熱を帯びている、キリヤが真顔で頷く度ごとに。

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