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第47話
「では、エルタニアの捕虜にはリュカス。フランツの捕虜にはゲードがリーダーとして当たって貰う。そして作戦は早まる可能性が高いので、皆その積もりで。少しの間だが皆休んでくれ。これにていったん退席して少し休ませてもらうことにする。いささか疲れたので英気を養いたい。戦さが始まるまではもうそれほど時間もないが、作戦に齟齬がないかを一人で考えたいと思う。以上だ」
貴族らしからぬとはいえ、この館の主人でもあるファロスはそう宣言するといったん部屋を出ようとした。このままでは、要らぬことまで話題に出る恐れがあったので。
信頼出来ると判断した部下達ではあったが、どうして作戦が早まるのかという点まで突っ込まれて聞かれた場合、神殿の介入が知られてしまう。少なくともファロスが選んだ部下だったので普通の人間よりも頭の切れは良い上に遠慮会釈もそれほどない。ただ、中立のハズの神殿のことだけにその質問だけは避けたかった、キリヤ様のために。
胸に入れた銀の額飾りに手を当てて部屋を横切った。ロードが用意してくれた席は館の主人に相応しく最も奥まった上席だ。散会を告げた室内には寛いだ――といっても嵐の前の静けさという感じだったが――空間の中でロードは何故かリュカスの席へと近付いて何やら真剣な感じで会話をしている。いや、正しくは質問というか相談のようだったが、ファロスに告げるべきだとロードが判断すればいずれ報告してくれるだろう。
ファロスの考えも尊重はしてくれるが、指令内に限っては各自が臨機応変に動いてくれる頭脳の持ち主達だ。
直ぐ傍の書斎へと足を運んで一人きりになってから銀の額飾りを胸の隠しから取り出して眺めて改めてキリヤ様のことを想った。
参謀として王に随行するファロスには戦装束というのは特にない。これが将軍だとか騎士ならば軍装に着替える必要も有るが、神殿に参詣した際も伯爵としての正装で臨んだので、このまま宮殿に行っても何も問題ない点が助かった。
独りになって考えに耽る時間が多ければ多いほど――と言っても全ての策はもう練ってあったが――今のファロスには有り難かった。
宮殿に参る時刻までは、あと数瞬しかなかったが、それでもその時間にキリヤ様のことを想うことが出来る宝石のような時間も大切にしたかったので。
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