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5DAY
「他に必要な物は?」
「えと、食材も、日用品も・・・メモしてきた物は全部買いました」
今日はアウルと一緒に街へ買い物に来てる。
お屋敷を出る前に、足りない物はちゃんとメモしてきたから、買い忘れはないはず。
それに、アウルが顔馴染みだという、フェルデリー商店でほとんど揃える事ができたので、思っていたよりずっと早く買い物が済んだ。
「じゃあ、帰りましょ・・・」
「斜向かいにあるラグの店に行こうか」
「ふぇ?」
言われたお店を見ると、看板にラグの店と書かれている。
ここも、顔馴染みのお店なのかな。
入ってみると、衣料品を扱うお店だった。
「おやぁ、リードさん、いらっしゃぁい」
店主とおぼしき男性は、ふわふわの茶色い髪に眼鏡をかけた、見るからに温厚そうな人だった。
「やあラグ。良かったら、この子に似合う服を何着か選んでくれるかな。私は今、目が見えないんだよ」
「あぁ、聞いてますよぉ、大変ですねぇ。じゃあお嬢さん、こちらへどぉぞぉ」
「ラグ、その子は男の子だよ」
また、女の子に間違えられた・・・。
僕、ちゃんと男物の服着てるのに。
「じゃぁ、これとこれとぉ・・・あぁ、これがいいですねぇ」
ゆったりした話し方とは裏腹に、ラグさんは手際よく服を選んで僕の前へ持ってきた。
「試着してみてくださぁい」
「ぇ、あ、はぃ・・・」
こんなに良い服、僕じゃとても買えないのに・・・。
それに、きっと似合わないんじゃ・・・。
とりあえず試着室に入り、渡された服一式を着てみる。
「ああっ!良いですねぇ!おやぁ、その帽子はお気に入りですかぁ?」
「ぁ、その、これは・・・っ」
髪を隠すために被っていた帽子。
脱げ、と言われてしまったら困る。
アウルに恥をかかせてしまうから・・・。
「ではぁ、こちらにはこの帽子を合わせてみてくださぁい」
「ぁ、はい・・・」
また、服一式を渡される。
アウルを待たせているので、急いで着替えた。
「可愛いですねぇ!じゃあ次はこちらをぉ。あぁ、さっきの分は預かりますねぇ」
最初に試着した服を渡し、新しい一式を渡される。
この作業、何時まで続くんだろ・・・。
「お疲れ様でしたぁ。お包みしますのでそちらでお待ちくださいねぇ」
5~6回ほど着ては脱ぎを繰り返し、やっとお許しが出たので試着室を出る。
ラグさんが勧めてくれたソファには、アウルがのんびり座ってお茶をすすっていた。
「ラグ、随分と張り切っていたね。シアンが可愛くて、着せ替えるのが楽しかったんだろう」
「か、可愛くなんかないですっ」
そう言ってアウルの傍まで行くと、彼は自分の隣の空いているスペースをぽんぽんと叩いた。
・・・隣に、座っていい・・・訳ないっ。
だって僕はアウルに雇われている身で・・・って。
「あ!ぼ、僕、服なんて買えませんっ!あの、ごめんなさい、あんなに試着してしまったのに・・・」
「あれは私が買ったんだよ。シアンは何も心配しなくていいからね」
「・・・ふぇ?で、でも・・・」
アウルが着るには、少し、いやかなり小さいのでは・・・。
「お待たせしましたぁ。こちらをお持ちくださぁい。他は後でお届けしますぅ」
「ありがとうラグ。では、またね」
「またどぉぞご贔屓にぃ」
まったりと笑顔で見送るラグさんにお辞儀して、アウルとまた街を歩く。
いつの間にか殆どの重たい荷物をアウルが持っている事に、お屋敷の手前で気付いて慌てるまで、僕はアウルと話をしながら街を歩く事を楽しんだ。
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