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6DAY
このお屋敷にもだいぶ馴れてきた僕は、掃除や洗濯にかかる時間がだんだん減ってきた。
そおなると、手持ち無沙汰になる時間が増える訳で・・・。
「あの、アウル、家事以外にも何か僕にお手伝い出来る事はありますか?」
「ん?家事以外?・・・そおだなぁ、私の仕事を手伝ってもらえたら助かるけど、目が治るまでは私も仕事が出来ないから・・・あ、シアンは動物は好き?」
昼食を済ませ、ガーデンカウチで小鳥と戯れていたアウルが、何か思い付いた様に僕に聞いた。
少し硬めに焼いたパンを小さく千切りながら、掌に乗ってくる小鳥たちに食べさせていた僕は、もちろん動物が好き。
「好きです」
「じゃあ、お願いしようかな」
パンを食べ終え、小鳥たちが青空へ帰って行くのを見送ってから、アウルに連れられまだ立ち入った事のなかった部屋へ。
連れられ、と言ってもアウルは目が見えてないので、僕がアウルを連れて行ったんだけど。
「この部屋だけ、鍵がかかってるんですね」
「うん、危ないからね」
「・・・え?」
危ない、って?
この部屋に何かあるの?
「鍵を開けるから、私の後ろにいてね」
「え、は、はいっ」
な、何が出てくるんだろ・・・。
恐いよおな、楽しみなよおな・・・。
アウルが鍵のかかった扉に触れると、かちん、と解錠の音がした。
え、触っただけなのに・・・?
「やあガルム」
扉を開けたアウルが、誰かに話しかけた。
アウルの後ろから、そおっと部屋の中を伺う。
広い部屋の真ん中には毛足の長い絨毯と、毛足の長い・・・。
「・・・ぉ、おおかみ!?」
黒くて大きな、狼。
僕の声に反応して、その金色の瞳で見詰めてくる。
・・・僕、美味しくないです、たぶん。
「シアン、彼はガルム。私の友だちなんだ。ガルム、この子はシアン。目が治るまで私の世話をしてくれる、男の子だよ」
あ、男の子ってとこ、強調された・・・。
僕、そんなに頼り無さそうに見えるのかな・・・。
ガルム・・・さん、相変わらず僕の事をじいっと見てる。
ど、どおしよ・・・。
相手は狼だけど、きちんと挨拶した方がいいよね。
雇い主であるアウルのお友だちなんだから。
「ぁ、シアン、です。よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げる。
そして、顔を上げた瞬間・・・。
「・・・っ!!?」
僕は固まった。
だって、部屋の真ん中で寛いでたはずの大きな黒い狼さんが、目の前にいたから。
こ、恐い・・・。
僕なんかよりずっと大きなガルムさん。
僕の頭なんか一口で食べられちゃいそお・・・。
「ホントニ雄カ?」
「ふぇっ!?」
しゃ・・・っ、しゃべ、・・・った・・・!?
狼の、ガルムさんが、喋った・・・!
「ガルムは言葉が解るんだよ」
アウルがさらっと説明してくれる。
解るんだよって、そんな狼いるの・・・?
「言葉以外モ解ル。オ前、雌ダロ」
「こらガルム、失礼だよ。シアンは男の子・・・だよね?」
「おおおおとこですぅっ!」
何でアウルまで疑うの!?
お風呂で僕の裸見て・・・ないんだった・・・。
だからって、男に決まってるのにっ!
「フゥン。りーどノ目ガ治ルマデ俺様ハ眠ッテイル筈ダッタンダガ、何故起コシタ?」
「シアンに君のお世話もお願いしようと思ってね」
「ホウ」
ええ!?
ガルムさんのお世話?
そ、そんな、僕なんかに、言葉が解る特別な狼であるガルムさんのお世話なんて・・・。
ちゃんと出来る自信、ない・・・。
「シアン、大丈夫。お世話と言っても、ブラッシングくらいだから。」
「ぶ、ぶらっしんぐ・・・」
い、いいんですか、僕なんかが触って、ブラッシングしても・・・。
「早速頼ム」
「ひゃいっ」
さっきまで目の前にいた筈のガルムさんが、最初にいた絨毯の上に寝転がっていた。
え、いつの間に・・・。
「し、失礼しま、す・・・」
びくびくしながら、ガルムさんの隣へ。
あれ、ブラシは・・・。
「コレヲ使エ」
「あ、はい、ありがとうございます」
ガルムさんが金のブラシを咥えて、僕に渡してくれた。
・・・かわいい、なんて思ったら失礼かな。
先ずは肩の辺りから背中にかけてブラシをかける。
右手でブラシをかけ、左手で撫でながら、毛並みが整っていくのを確認。
・・・とっても毛並みが良いです。
柔らかくてつやつや。
夢中でブラッシングを続ける。
ちらっとガルムさんを伺うと、目を細めてうっとりしてるみたい。
良かった、気持ち良さそう。
僕自身も、このブラッシングが楽しくて、これから毎日の日課にしよう、と思ったのだった。
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