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7DAY
「シーアーンーちゃーーーん、あっそびーましょーーー」
「だめです」
「なんでお前がだめって言うんだリード」
大きな声で呼ばれ、アウルに買ってもらった帽子を被りながら慌てて出迎える。
声の主は、王国騎士団長グラン様。
「ぁ、あの、僕にご用でしょうか?」
「今日はシアンちゃんの作ったお菓子でお茶をご馳走になろうかと思って、休みを取ってきたんだ。まあ、日が暮れる前には戻らないといけないんだけど」
「あっ、はい!すぐご用意できます、お掛けになってお待ちください」
広い応接間にお通しし、アウルとグラン様の紅茶を用意する。
いつもはお茶もアウルと一緒に頂いてたんだけど、グラン様の前では出来ないから・・・。
今日のケーキも上手に焼けたし、喜んでもらえるといいな。
「お待たせしました、どおぞ」
「おや、シアンちゃんの分は?」
「シアン、約束したよね、お茶も一緒にするって」
「ぁ、ぅ・・・はい・・・」
い、いいの?
グラン様がいらっしゃるのに、僕も一緒にお茶していいの?
急いで僕の分の紅茶を用意して行くと、2人とも待っててくれたみたいだった。
僕がソファに座ってから、グラン様がケーキにフォークを刺した。
「んーっ!美味しいよ!シアンちゃん、お店出せるんじゃない?」
「同感です。まあ、暫くは私専属のお菓子屋さんだけどね」
「羨ましいなぁ」
そ、そんな、お店だなんて・・・。
僕なんかが作ったお菓子なんて、きっと誰も買ってくれないのに・・・。
「じゃあシアンちゃん、リードの目が治ったらさ、王国騎士 団に来てよ!可愛いシアンちゃんが毎日おやつ作ってくれたら、士気が上がると思うんだよね~」
「だめです」
「だから、なんでお前がだめって言うんだリード」
あ、さっきも同じよおな事、言ってた。
思わず笑ってしまうと、グラン様がびっくりした顔をした。
ど、どおしよ、失礼だったかな・・・ぁ、謝らなきゃ・・・っ。
「ご、ごめんなさ・・・」
「シアンちゃん、ほんとに可愛い・・・リード、お前まさか・・・天界から天使を召喚したのか!?」
「さすがの私にもそんな事は出来ないよ」
天使を召喚って・・・そんなわけないじゃないですか・・・。
僕は、天使どころか・・・きっと、もっと禍々しい・・・。
「まあ、そうだね、こっそり下界に降りてきた天使を幸運にも雇うことが出来た、と言ったところかな」
「ぁ、あの、僕・・・僕はそんな・・・」
「だから、シアンが天界に還ると言うまで、私が傍でお世話をするんだよ。目が治ったら、ね」
そお言って、美味しそおにケーキを頬張るアウル。
目が、治ったら。
そしたら、アウルは僕を見て、どう思うんだろう。
なんて、言うんだろう・・・。
穏やかなティータイム。
談笑する2人と同じテーブルを囲んでいるのに、僕だけが、どこか暗く、遠い場所にいる気がして。
上手に焼けたはずのケーキの味も、分からなかった。
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