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8DAY
「オイ」
「何ですか?」
「オ前、何デ屋敷ノ中デモソレ被ッテルンダ?」
ガルムさんのブラッシング中、突然聞かれて何の事かすぐにわからなかった。
あ、そおか、帽子・・・。
「あ、ぇと・・・ぼ、帽子、好きなんです・・・」
「フウン」
来たばかりの時は、お屋敷内では被ってなかったんだけど、グラン様が遊びに来たり、ガルムさんに会ったりするから、ずっと被るようにしてる。
「角デモ生エテルノカ?」
「はぇ?ぃ、いえ、ツノは生えてません・・・」
な、何でツノ?
あ、帽子で隠してるのがツノだと思ったの?
「りーどハ今何モ見エナイシ、俺ハ気ニシナイゾ、角ガ生エテテモ」
「ツノは生えてないです」
「ジャア何ガ生エテルンダ?」
「な、何も、生えてなんかないですっ」
「・・・無毛ナノカ」
「そーじゃなくてっ!」
「くっ・・・ふふふっ、ガルム、あまりシアンを困らせないで。ブラッシングやめにするよ?」
部屋の隅にある揺り椅子で、うとうとしてたはずのアウルが笑った。
そう、アウルは見えてないけど、聞いてるから。
帽子の事も、ガルムさんが言わなければ、ずっと被ってる事は知られてなかったはずなのに。
「ガルム、最初に会ったときも、シアンは帽子を被っていたの?」
「被ッテタ」
「そう。シアンは本当に帽子が好きなんだね」
「あ、はぃ・・・」
嘘をついてる。
こんな僕に優しくしてくれるアウルに。
ずきずきと、心が痛む。
言ってしまったら、この痛みはなくなるのかな。
彼が僕の事を知ってしまったら、きっとここには居られなくなる。
そしたら、アウルのために働けなくなる。
アウルの目が治るまで、傍に居てお手伝いする事ができなくなる。
・・・・・・・・・ごめんなさい。
もお少しだけ、僕は貴方に嘘をつき続けます。
もお少しだけ、傍に居させてください。
貴方の目が治る、その時まで・・・。
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