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25DAY
「嫌ナ予感ガスル」
今日は天気が悪いので、ガルムさんの部屋でまったり過ごしてる。
金のブラシで丁寧に毛並みを整えていたら、急に背中からしっぽまでの毛が逆立った。
「嫌な予感?」
「・・・来ルゾ」
「え、なにが・・・」
ガルムさん、何かを警戒してる?
どおしよ、ちょっと恐い・・・。
「ぁ、リードさん、ガルムさんが・・・」
「大丈夫だよシアン。お客が来るんだ」
お客様?
じゃあ、仕度をしなくちゃ・・・?
「俺ハイナイト言エ」
「そんな嘘は通用しないよ」
ガルムさんが警戒するお客様って・・・いったいどんな人が来るんだろう・・・。
アウルと応接間へ行き、彼をソファに座らせてからお茶の用意を始める。
「あの、どんな方がいらっしゃるんですか?」
「私の古い友人と、そのパートナーだよ」
お二人いらっしゃるんですね。
三人分の紅茶をすぐ淹れられるようにしておいて、僕の分は念の為別に用意しておく。
僕は遠慮した方がいいかもしれないし。
「ああ、来たよ」
「あ、じゃあお迎えに・・・」
僕が部屋を離れようとした瞬間、お庭に雷が落ちた。
本当に、唐突に、なんの前触れもなく、ずどんと。
「───っ!!?」
声も出なかった。
びっくりし過ぎて、床にぺたんと座り込んでしまう。
「大丈夫だよシアン、おいで」
ぁぅ、あうる、なんでそんな平気なの・・・。
四つん這いのままアウルの所まで這って行って、座っている彼の膝に縋り付く。
もお、なりふり構ってられない、恐いもん。
「ああ、恐がらせてしまったね。大丈夫、何があっても私が必ず君を守るから」
床にへたり込んだままの僕を、アウルがひょいっと抱き上げて膝の上に座らせた。
ちょ、お、お客様が来るのに、雷も、なのにこんな、ぎゅってされたら・・・っ。
「やあ、西のリード」
「久しぶりだね、東のヒトデナシ」
・・・ってほら!
お客様来ちゃったじゃないですかっ!
「あぅ、り、リードさん、放してくださ・・・」
「ああ、ごめん」
何とか立ち上がって、お客様にご挨拶する。
・・・あれ、もしかして、お庭からいらっしゃいませんでしたか?
「随分と派手な訪問だね」
「箒に乗るより雷の方が速いだろ」
・・・どっちも、乗れませんけど・・・?
え、もしかしてこの人も・・・。
「彼は東の大陸に住む魔法使いだよ。ほら、前にガルムが話していた魔導狩り、覚えてる?あれを殲滅したのが彼と、パートナーのヴェセル君なんだ」
魔導狩り・・・って、何百年か前に滅ぼされたって、ガルムさん言ってなかった?
この人達が、何百年か前に魔導狩りを殲滅したってこと・・・?
「初めまして、ヴェセルです」
「ぁっ、は初めまして、シアンですっ」
ヴェセル君・・・真っ白な髪に紅い瞳の綺麗な子。
この子も魔法使いなのかな・・・。
「ヴェセルは人でなしの俺が飼ったから、今は半分魔法使いみたいなものだけど、元は人間だから仲良くしてやってくれ」
「は・・・はぃ・・・」
元人間・・・。
そお言えば、お客様の事をアウルが「東のヒトデナシ」って呼んでたけど・・・それって名前なの?
あ、もしかして・・・アウルがリードって名乗ってて、名前が秘密なのと同じかな。
「先生、突然お邪魔した要件をお伝えしないと」
ヴェセル君、東のヒトデナシさんを先生って呼んでるんだ。
僕は・・・何て呼んだらいいのかな・・・。
「ああ。リード、悪いがガルムの涙を分けてくれないか?」
「ガルムの涙?・・・うーん、私は持っていないから・・・本人に直接頼んでみて」
ヒトデナシさんは、ガルムさんと知り合いみたい。
アウルといっしょに、二人をガルムさんの部屋へ案内する。
・・・あれ、ガルムさん、いないって言えって・・・。
いいの、かな・・・。
「ガルムー、久しぶりー、お涙ちょーだい」
「ウガアアッ!ナンデダ!イナイッテ言エッテ言ッタノニ!しあん!」
「ごっ、ごめんなさいっ」
僕が悪いの!?
騒ぐガルムさんを意図も簡単に捕まえて、にやりと笑うヒトデナシさん。
ヴェセル君はガルムさんの顔近くで、ガラスの小瓶を持って待ち構えてる。
・・・ど、どおしよ、大丈夫かな・・・。
「さあ、イイ声で鳴いてくれよ」
「ま、待ってください、乱暴は・・・っ」
「ゥギャハハハヒハハヒギャハヒヒハヒハ!!」
ええー!?
ヒトデナシさんが、ガルムさんの脇腹くすぐってる・・・。
ガルムさん、凄い笑ってるけど・・・。
ま、まあ、痛い事されるんじゃなくて、良かった・・・のかな・・・。
ちょっと苦しそうだけど・・・。
「先生、魔獣の涙収集完了しました!」
「よし、帰るか」
お茶を勧める暇もなく、二人は嵐のように・・・というか雷の如く去っていった。
・・・雷に乗るって、おしりビリビリしないのかな。
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