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11DAY
今日はアウルといっしょに買い物に来ています。
なぜか王国騎士団長グラン様もいっしょ・・・。
可哀想だけど、ガルムさんはお留守番。
「シアンちゃん、これも買おうよ!あ、こっちも美味しそうだよ!あとねー、これは?」
「こ、こんなに買ったら、ケーキの上に乗りきらないです・・・」
グラン様が色んな果物を次々手に取っていく。
果物以外にも、既にたくさんの材料をグラン様が買ってくれた。
・・・ぁ、ケーキを大きくした方がいいのかな・・・。
「食べきれなかった分は王国騎士 団に持って帰っていい?あいつら喜ぶよ~」
「ダメです」
「だから、何でお前がダメって言うんだリード」
アウルって、グラン様にはちょっとイジワルなの、なんでだろ・・・。
「それにしてもさぁ、何でリードはシアンちゃんと手ぇ繋いでるのに、俺はダメなわけ?」
「私は目が見えないからシアンと手を繋いでいるんだよ。目が見えている君は独りで歩けるでしょう」
僕とアウルは、外出する時に手を繋いでる。
最初は周囲 の目が気になったし、僕なんかと手を繋いでるせいで、アウルが変な目で見られたらどうしようって思ってた。
でも、この街の人たちはほとんどアウルの知り合いで、こんな僕にも優しくしてくれる。
アウルって本当にすごい人なんだなって、改めて思った。
「目が見えてたって繋ぎたい!」
「ダメです!」
子供みたいに喧嘩してるふたりを、お店の人も笑って見てる。
グラン様も、王国騎士団長だけあって街の人たちから慕われていて、材料がたくさん買えたのも、お店の人がいっぱいおまけしてくれたからだ。
・・・いいな、僕もふたりみたいに、尊敬されたり慕われたりしてみたいな。
「もうこれ以上持てないよ。シアンも疲れちゃうし、帰ろう」
「殆んど俺に持たせてるじゃないか」
「あっ、ごめんなさい、僕が持ちますっ!」
ほんとに、重たい荷物は全部グラン様が持ってた。
どおしよ、僕、軽いのばっかり持ってる・・・。
「シアンちゃんはいいんだよ、リードっていう大荷物持たされてるんだから。リードは空いてる方の手でこれを持て」
「まったく、仕方ないな」
「あの、僕が荷物を持つので、グラン様がアぅ・・・リードさんと手を繋いでください」
アウルの名前は秘密なのに、うっかり言っちゃいそうになった・・・。
でも、リードって呼び慣れなくて、なんとなく、さん付けで呼ぶ。
「・・・グランと手を繋いで歩くぐらいなら杖を使うよ。でも杖は使い慣れないから、あちこちにぶつかって転んで、怪我をするかも・・・」
「・・・俺だってリードと手ぇ繋ぐくらいならひとりで荷物全部持つ。それより、シアンちゃん俺の事、様付けで呼ばないで・・・」
僕よりずっと背が高くて立派な人たちが、そろってしょんぼりしてしまった。
な、なんでだろ、罪悪感・・・。
「ぁ、ごめんなさい・・・リードさんは、僕が手を繋いでますから。グランさ・・・」
「グランって呼んでよ。様もさんもなしで」
「・・・ゎ、わかりました、グラン」
アウルの手は放さない、グラン様をグランって呼ぶ。
たったこれだけの事で、ふたりともすぐ元気になってくれた。
ええと、これで良かった・・・の、かな・・・?
とにかく、早く帰って大量の食材を調理しなきゃ。
お屋敷に帰るまで、重たい荷物を全部持ってるとは思えないくらい、はしゃいで楽しそうなグラン。
僕もたくさん話して、アウルは時々相槌を打ってくれてたから、僕は気付いてなかった。
アウルがちっとも笑っていなかったことに・・・。
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