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14DAY
ここ、どこだろ・・・。
暗すぎて、ほんの少し先しか見えない。
崖とかあったらきっと、気付かないで落っこちちゃうだろおな・・・。
昨夜からずっと、森の中を彷徨 ってる。
昼間、小さな川を見付けて水を飲んで、それからまた歩いて・・・。
お腹も空いたし、もおこれ以上歩けないし、今夜はどこか休める場所を探して眠らないと。
それで、これからどおするか、考えなきゃ・・・。
「・・・ぁ、洞窟・・・?」
立ったまま入れるくらい高さがあって、休むには良さそうな横穴を見付けた。
入ってみると、奥にはもう少し先があるみたいだったけど、暗過ぎてなにも見えない。
月影 が射し込む洞窟の入り口で、岩壁に寄り掛かって座り、膝を抱える。
「・・・これから・・・どおしよう・・・ぁ、そおだ、鉱山・・・」
最初から、隣街の鉱山で働けばよかったんだ。
僕なんかが、あんな立派なお屋敷で、あんな立派な人と、一緒になんていちゃいけなかったんだ・・・。
「・・・ごめ・・・なさ・・・っ・・・ぁ・・・ぅる・・・っ」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・。
グランから僕の事を聞いたら、アウルはどう思うだろう。
きっと嫌な気分になるんだろう。
僕のせいで恥をかいたと思うかもしれない。
実際、僕は彼の傍にいるだけで、彼に恥をかかせていたんだ。
どおやって償えばいいんだろう。
償いたくても・・・きっと、もお二度と、会えない・・・。
「・・・っ、ぅ・・・っ、・・・ひぅ・・・っ」
会いたい、アウルに、会いたい。
せめて、会って謝りたい。
赦して貰えなくても、伝えたい。
ただ僕は、貴方のために働けて嬉しかったと・・・。
僕は、貴方の事が・・・・・・・・・。
───グルル・・・
いつの間に眠ってたんだろう。
地響きみたいな音で目が覚めた。
外はまだ暗い。
月影が雲に隠れて、闇が濃くなったみたいだった。
───グルルルル・・・
洞窟の奥から聞こえる。
これ、地響きじゃ、ない。
獣の唸り声だ。
「・・・・・・っ」
息を潜めて、静かに洞窟を離れる。
暗くて、何が唸っているのかわからない。
でもきっと、大きな獣だ。
どおしよう、逃げなきゃ・・・っ。
「・・・っ!?・・・ぁぐっ!」
洞窟に背を向けて走り出そうとした瞬間、右肩に衝撃と、少し遅れて鋭い痛みが走った。
肩を押さえ、振り向かずに走る。
次撃を受けたらもお逃げられない・・・!
「っ、はぁっ、はっ・・・っ」
あの洞窟の大きさ、肩に受けた衝撃の重さ・・・たぶん、熊だ。
出来るだけ遠くへ、縄張りの外に出るまで、走らなきゃ。
「・・・っ、ぅあっ!?」
木の根に躓き、咄嗟に怪我をした右肩を庇い身体の左側を下にして倒れる。
立たなきゃ、そう思って左手を地面に突いた瞬間。
「ぁああああっ!!」
黒い鉤爪の大きな前足が、僕の左足首を踏みつけた。
みしり、と嫌な音がして、痛みと痺れが走る。
左腕からも力が抜け、地面に倒れ込んでしまった。
これじゃ、走って逃げるどころか、もお立てない。
熊には、僕の髪の色なんて関係ないんだ。
ただの獲物でしかないんだ。
今まで僕を苛 んできたものが、僕を食べようとする熊にとっては何の意味もない事だなんて。
なんだか、笑えてきた・・・。
「僕、何で生まれてきたんだろ・・・」
僕が死んだら、誰か少しは、悲しんでくれるだろうか───。
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