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コインランドリー・デートスポット

「ああ。ちょっと腕をやっていて。大した怪我じゃないんだけど」 「早く言ってくださいよ。手伝います」 「僕は大丈夫だから」 遠慮がちに断られたが、別にこれぐらい大したことじゃない。怪我をしている人の手伝いをせずに突っ立っていられない佐倉は温かい中に手を突っ込む。 量が少ない洗濯物を奥から引っ張り出して久坂の持参している籠に放り込む。皺になってはいけないシャツなどはできる限り丁寧に。靴下はセットで、等無駄なお節介を焼いてしまった。随分とこの反復運動にも慣れてきたなと実感する。 「なんか恥ずかしいから本当にいいよ。一人でできる」 「初日に俺のパンツ見といて何言ってるんですか。おあいこですよ」 珍しく恥ずかしそうな顔で佐倉を押しやろうとする久坂の右手を掴んで大人しくさせる。ここは大人しく佐倉の温情に甘えるべきだ。彼の役に立てていると考えるとなんだか嬉しくなった。 どうにかして佐倉を退かせたい久坂を無視して次々とたぐり寄せた。襟元にお洒落な刺繍が入っているシャツ、真っ黒な靴下、無地のトレーナー。それから、 「佐倉くん」 「はい、これで最後ですよ。しょうゆでも零したんですか?」 「・・・・・・ありがとう」  青白い街中からはじき出されたグレーの瞳の色が佐倉の頭にこびりつく。こんな目をする久坂に気づいてしまった瞬間、この人は自分とは違うと明確な差から目を逸らした。 どうにも認めたくない自分がいることにも悟って、久坂の心苦しそうなありがとうに眉根を寄せる。あれ、こんな顔にしちゃうつもりじゃなかったんだけれども。薄暗い日和を溶かす微笑みが見たかっただけなのに。口にするだけ無駄な事を佐倉が誰よりも知っている。 「いいんですよ。俺が困ってたら手伝ってくれるだけで」 「そうだね、しゃきっとしないと君をいざという時に助けられないかもしれない」 「そこまで深刻に考えなくても」 「明日も雨なら僕ここに来る予定なんだけど佐倉君はどう?」 「露骨な話題変更、嫌いじゃないです」

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