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この爆弾一号が!!
「私の車を見て逃げましたね?何故ですか?」
「スミマセン人違イデス。離シテクダサイ」
「人違い……?まさか私の顔をお忘れになったのですか?それともそういうプレイですか?ならば甘んじて受け入れましょう」
「うるせえこのドエム!」
「いいですねもっとののしってくださいませんかむしろ足蹴にしてください」
真顔でそんなことをほざきやがる馬鹿はまともに付き合ってられねえ。
懸命に前に進もうとするが、凄まじい腕力で一歩も進めない。むしろ引き寄せられてる。全身の筋肉を使ってる俺に対して、こいつは涼しげな表情で片手一本だけ。報われなさ過ぎて泣ける。家に帰ったら筋トレしよう。一週間たたず飽きるけど。
こいつ、やっぱり俺より随分と身長が高い。十センチ以上は優にあるだろう。百七十八ぐらいか?前に聞いてもいないのに自分のプロフィールぺらぺら話してくれたけどもちろん記憶から抹消している。
「定刻でしたのでお迎えに上がりましたよ、千晴様」
短く切った黒髪がクールな顔立ちを強調している。スーツはしわの一つもない。黙っていればクールなお兄さんで通りそうだ。黙っていればの話だ。口縫い上げてやりたいよ。
「ほんと人違いなんで!早く離してください!」
「いえ貴方は私が知っている足立千晴様ですよ。先ほどの罵り、素晴らしかった。ドエム心を弄ぶ鋭い一言。腕をあげられましたね」
「だから真顔やめろっつーの!逆に怖い!うぜえなこのおっさん!」
「ぞくぞくしました」
ほんと気持ち悪いんだけどどうしよう!悪態ついても逆にご褒美になってるんですけど!ついに隣に引きずり込まれてバランスを崩して転びかけたが、すぐに男に支えられた。
「気を付けてください。転んだら痛いですよ。私が貴方の下敷きになれば一件落着ですが」
「おっ、俺を守ってくれるのかよ」
「貴方が助かって私は貴方の下敷きになって、貴方にさりげなく密着でき、そのうえ痛みまで与えられる。一石三鳥です。これぞスタイリッシュワンストーンスリーバード」
「感動した俺がバカだった!」
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