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爆弾どもが
「足立?この人ら誰なんだ?お前の知り合い?」
やかましい大人二人の胸倉をつかんでいると、控えめな声が割り込んできた。興奮していたはずの俺の頭が一気に冷却される。
振り返ると困惑しきった桜井君が。
すっかり忘れてた。やってしまった。こんなに馬鹿やったあとじゃ、知らぬ知らないで済まされない。いくら鈍感で有名な桜井君だろうが、もう人違いでは説明しきれない。
本格的に背水の陣へと追いやられた。
この状況での味方は後ろでぼーっとしている爆弾どもしかいないが、仲間といっていいのか、果たして。
だが俺の事情を知り、なおかつ助け船を出してくれるのは、もうこいつらしかいない。こんな変態どもに頼らないといけない俺が情けなくて辛い。背に腹は代えられないとはまさにこのこと。
ちらりと意味ありげに視線をおくると、サングラスを輝かせながら親指をたてられた。おっこいつまさか俺の意図を察してくれたのか!俺が言うより、こいつが言ったほうが信憑性がわくだろう。嘘もつきなれてるだろうしな。
「えーっと俺らは坊っちゃんの組の者でしてー」
「お前は黙ってろ。な?」
そんなわけなかった。あるはずなかったんだ。全力で背伸びをして余計なことを言いかけたその口を手で抑える。そのままの勢いで流星になれそうなぐらい本気で動いた。
「随分と赤松には積極的なんですね。私の口は塞がなくていいんですか?貴方の唇が空いてますけど。ウェルカムリップ、ウェルカムキス」
「お前もちょっと黙ってて。ね?今生のお願いだから?」
「組ィ?」
「気のせいじゃない!?グミって言ったんじゃないかな?グミ食いたいって言ったんじゃない?もーやだね!歳とったらよく意識がもうろうとするからいけないや!」
まだ俺二十前半なんですけど。そう言いたげにサングラス越しに睨まれて、俺はちょっと申し訳なく思った。
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