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しかじかかくかく

「なのに甲斐田さんが割り込んできてさー事務所でひと悶着あったけど結局二人で迎えにいくことになったんだーほんと甲斐田さんお邪魔なんだけどー」 自分より小さい黒髪の甲斐田を、じっとり見下ろしながら赤松は唇を尖らせる。年下のくせに見下ろされた甲斐田は真顔で鋭い視線を投げ返す。 「赤松みたいな下半身がだらしない男一人で行かせるなんて、貴方の童貞が危ないと思いまして。当然の処置です」 「甲斐田さんって俺には辛辣だねー」 「そうですね。好きじゃありませんから。あ、千晴様は好きですよ。安心してください」 「いや何を安心したらいいかよく分かんない」 「不安しかないこのご時世」 「奇遇だねー俺も実はあんまりあんたのこと好きじゃないんだー気があうねー坊っちゃんは好きだけど」 「そこまで!お前らここがどこだかわかってんのか!」 至近距離で凄みあいだした二人の間に飛び込んで、深々と疲れを吐き出す。いつもこんな調子で喧嘩という名の殺し合いが行われている。俺がいるときは身を挺して鎮火させるんだが、このやり取りはぶっちゃけ飽きてきた。喧嘩する理由のレパートリーを増やしてほしい。 「まあ来てしまったもんは仕方ないし……早く帰るぞ。これ以上目立ちたくない」 「そんなこと言って実はうれしいんでしょ坊っちゃんー顔緩んでますよー」 「ウソだろ!?」 「嘘だよー」 「殴っていいか?ん?殴られたいのか?」 「殴るなら是非私を!」 「甲斐田……お前はほんと黙ってて?後で飴やるから」 こんな感じで足立千晴の日常は無駄に浪費されていくんだなぁって考えたら頬を暖かい何かが伝った。泣いてなんかないんだからな!

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