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服従の証
「どこへ行こうと?貴方の変えるべき場所はここであり、私の胸の中でもあります。さあいらっしゃいませ。お帰りなさい」
「そんな風に腕広げられてもいかねえからな!」
さぁウェルカムです。真顔で受け入れ態勢を整えた甲斐田に、怒声を飛ばす。
「お前なんでここにいるの?暇なの?いつも俺がいるところに現れるよな?ストーカー?」
「愛を追いかけるもの、と言ってください」
渋くて静かな声音で愛とか言われても違和感しか覚えない。
「ただのストーカーじゃねえか!いい声で言ってもダメ!」
「ったく!どうしようもない奴だな!果てしなく俺の邪魔ばかり!」
ふつふつ怒りを沸かせながら腰をおろしてスニーカーの紐を解いていく。立ったまま脱ぎ散らかす奴がいるけど、俺はそんなだらしない人間が大嫌いだ。でも自分の部屋は割と汚いので公衆の面前では言いにくい。
「抜き打ちテストも全然わからなかったし、赤松の野郎弁当に昨日の残りのきんぴらごぼう入れやがったし……」
変にがんじがらめになった紐にイライラしてしまった。乱暴に引っ張ると泥沼にハマるとわかっていても、手つきが雑になっていく。ああ、畜生!むかつく!
格闘している間、俺は甲斐田のことなんて忘れてた。自分でもひどいとは感じるけど、それどころじゃねえんだ!
背後で人が動く気配をしても俺は下を向いていた。気がついたら俺の前で片膝をついてじっと俺の顔を覗いていた。
なにやってんのこいつ。
舌打ちをするけど、俺の前で跪く姿は、なんというか、その。
変に様になっていた。甲斐田って家来とか重鎮とかいう位が似合う気がする。
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