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魔性masochism

「うるせえ!俺に近づくなドエムっ!」 肉を打ち付ける鈍い音が廊下に響いた。 「あっ………」 やべえ!本気で殴っちまった…! 自分がやった行為に声にならない呻きをもらす。流石に罪悪感がこみ上げてきた。 いや殴られて当然のことをされたけども、この後味の悪さやばい。俺は思いっきり顔を歪めた。 のけぞったまま甲斐田は動かない。ストレートに頬に吸い込まれていった。 自画自賛するぐらい綺麗な右ストレートだったよな?めっちゃじんじんするもん!超痛いもん、俺も!痛み分けってことで勘弁してくれないかな?無理ですよねーそうですよねー。 流石に怒ったよな?ちらりと甲斐田を窺う。 ゆっくり上体を起こした甲斐田は無表情だった。普段通りなんだけど、それが今はとても怖い。口の端が切れて血が滲んでいる。 俺のパンチなんつー破壊力だよ!成長したな俺!ふぅ!喜んでる場合じゃない。多分完全に油断していたから思いのほかダメージが入っただけだ。 沈黙がとても辛い。泣き出しそうになったが、プライドが抑え込んでくれた。 普段殴ってください殴ってくださいとほざいてるけど、年下に殴られて、怒ってるよな?憤怒した甲斐田の逆襲を考えただけで嫌な汗が流れる。 こっちは高校生あっちはヤクザ。取っ組み合いになったらどっちが有利かなんて、馬鹿でもわかるわ! いくら変態的行為をされようとも甲斐田に手を出したのは俺だ。つまり俺が悪い。悪いことをしたら謝る。単純な三段論法だったけど、俺は素直に行動することができなかった。

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