27 / 40

魔性masochism

だけど、普段甲斐田に対して謝罪なんてまともにしたことないから、どういう顔でなんて言えばいいかわからない。 なんて最低な奴なんだ俺は。なんて屑なんだ俺は。「ごめんなさい」簡単な一言が出てこない。ひねくれすぎだろ! いくら嫌いな相手だろうが謝罪はしないと、自分の人間性を疑ってしまう。自分で自分を怪しむのは何とも情けないことだと思う。 さあ言え!一言!一言でいいから!ごめんなさいっていうんだ千晴よ! 「そっそのだな、勢いっつーかなんつーか、その…あー…うん、えーっと、悪かったっつーか」 しどろもどろになったせいか、どうも歯切れが悪くなった。あれ?なんで俺こんなにくじけそうになってるの?意味分かんない。俺がなんでこんな目に!甲斐田の馬鹿野郎!変態ドエム!鉄火面お化け! しまいには心の中で逆切れしはじめる。もう自分が屑すぎて辛い。 パニックになりかけてると、甲斐田がゆっくりと口を動かした。やばい、死刑宣告?お前、倍返しどころじゃすませないぞ100倍返しだ宣言!? なすすべもなくボコボコにされる自分が思い浮かんできた。せめて10分の1殺しでお願いします!ほぼ生きて帰れますように! 「興奮しました」 ドキドキする俺に浴びせられたいつものノートーンは、いつも通りだった。 謝る必要なさそうだわこれー。こいつがどんだけマゾかということを、甘く見積もっていたらしい。 これでも結構バカにしていたつもりなんだけど、まだ俺の想像を超えていくか。

ともだちにシェアしよう!