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魔性masochism
だけど、普段甲斐田に対して謝罪なんてまともにしたことないから、どういう顔でなんて言えばいいかわからない。
なんて最低な奴なんだ俺は。なんて屑なんだ俺は。「ごめんなさい」簡単な一言が出てこない。ひねくれすぎだろ!
いくら嫌いな相手だろうが謝罪はしないと、自分の人間性を疑ってしまう。自分で自分を怪しむのは何とも情けないことだと思う。
さあ言え!一言!一言でいいから!ごめんなさいっていうんだ千晴よ!
「そっそのだな、勢いっつーかなんつーか、その…あー…うん、えーっと、悪かったっつーか」
しどろもどろになったせいか、どうも歯切れが悪くなった。あれ?なんで俺こんなにくじけそうになってるの?意味分かんない。俺がなんでこんな目に!甲斐田の馬鹿野郎!変態ドエム!鉄火面お化け!
しまいには心の中で逆切れしはじめる。もう自分が屑すぎて辛い。
パニックになりかけてると、甲斐田がゆっくりと口を動かした。やばい、死刑宣告?お前、倍返しどころじゃすませないぞ100倍返しだ宣言!?
なすすべもなくボコボコにされる自分が思い浮かんできた。せめて10分の1殺しでお願いします!ほぼ生きて帰れますように!
「興奮しました」
ドキドキする俺に浴びせられたいつものノートーンは、いつも通りだった。
謝る必要なさそうだわこれー。こいつがどんだけマゾかということを、甘く見積もっていたらしい。
これでも結構バカにしていたつもりなんだけど、まだ俺の想像を超えていくか。
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