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わしゃわしゃ
「やり返してやる!ちょっとしゃがめ!」
目には目を歯には歯を!髪の毛の復讐には髪の毛を!最後は俺が生み出した名言もどきだけど似た格言あった気がする!つまりされたことを倍以上の割合でお見舞いしてやれってこと!
てなわけでワックスつけているであろう赤松の髪の毛をぐしゃぐしゃにする復讐に躍り出る。思い知れ俺の恨み。背の高い赤松の頭に触れることは困難だ。背伸びしても先っちょにかするぐらいが精いっぱい。ならばどうすればいいか思案する。
「飛びかかってねじ伏せて押さえつけてやればいいんだ!」
赤松の広い背中に本気のタックルをお見舞いしてやる。ひょろ長いくせに倒れず、躓くぐらいの被害しか与えられない。倒れろよ!悔し紛れによじ登ろうとして、やっと焦った声が聞けた。
「ちょっ坊ちゃんどうしたのー!?積極的だね俺におんぶしてほしいなんてー」
「いいからおとなしく俺に撫でまわされろ!そして俺の屈辱をたんと味わうがいい!
「やめてー坊ちゃんに押し倒されるー」
「ふざけんな誰がお前みたいなおっさん襲うか!抜きまくってやる!枯野にしてやんよ!頭さみしくしてやんよー!」
「あっちょっ!やめてー!この年になるとそろそろ頭皮の心配が………!」
「お前いくつだっけ!?」
ぎゃーぎゃーと騒ぎ合う。俺相手じゃ赤松も無理やり振り下ろすという横暴には出れないだろうから、好き勝手させてもらう。落ちないようになんやかんやでおんぶの体制になってるけど、手加減したりしないぜ!
あっそういやここ廊下だったな。濃い髪を引っ張りながらふと思う。
まっいいか。今の俺は赤松への復讐心で周りが見えていない。ワックスで綺麗にセットしてあるであろう髪の毛をむちゃくちゃすることしか頭になかった。人をいじめるのってこんなにも楽しい!
がたんっ。近くで何か重たいものを落とした鈍い音が響く。なんだ鞄でも落としたのか?音のした方向を振り返った俺はぎょっと目を見開く。硬直した俺の異変に気付いた赤松が「どうしたのー?」とくるりと方向転換する。赤松の息をのむ声が鼓膜に静かに響いた。
珍しく無表情を驚愕に染め上げている甲斐田の顔が何故か直視できずに、気まずげに視線をそらした。いや違うんだこれはな。今更になって自分がどれだけ馬鹿なことをしてるのか気づく。
「私は何も見てません赤松さんといちゃいちゃしてる貴方なんて見てません幻覚錯覚幻聴幻です今赤松なんかとじゃれあっているあの方は偽物残像にしか過ぎないのです赤松の息の根を止めれば悪夢は終わるに違いない」
「甲斐田が壊れたー!?」
汗を大量に流し始めた甲斐田に慌てて駆け寄る。その際変な降り方をしてしまったので赤松が蛙が潰れたような悲鳴をあげた。いろいろとごめん赤松!
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