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アンダーウェアに理想論
「獲物はこの部屋の中にあるよー」
「そりゃ当然ですよね」
千晴のパンツを狙っているのだからそりゃ千晴の部屋にあるにきまってるだろ。そんなことを思う甲斐田。だが赤松はノリにのって、わざと低い声をだした。
「いいかい俺たちは隠密作戦を遂行しなきゃならないんですよ。目立つ行動と服装は控えてくださいねー!」
スパイごっこでもしてるつもりか。また変なスパイ映画でも見たな。影響されやすい思春期か。そのうち青春映画でも川辺で缶けりしよーぜ!という日がきそうで怖かった。
「普通に忍び込んだらいいのに変な設定作らないでください。面倒です」
いい大人が情けない。自分より年下の部下に頭を抱えたくなる。
「え?なにスパイらしくない?」
「髪の毛真っ黒にしてから出直してください」
「うーん全身黒タイツにしたほうがよかったかなー」
「髪の毛って言ってますよね?服装のこと誰も言ってませんよね?」
おっさんの全身タイツを想像して胃の中がぐるぐる回り始めた。想像だけでこれだ。本物ならばどれほどのダメージを負っていたか。
それ以上考えると、千晴のパンツを手に入れる前に倒れてしまいそうなので慌てて振り払う。パンツを拝むまでは死ねない。甲斐田の堅い決意は揺るがなかった。
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