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アンダーウェアに理想論

「ありー鍵かかってるー」 ドアノブをガチャガチャ引っ張るが開く気配ない。千晴の警戒心は日を追うごとに強くなっていっているらしく、がっちり施錠されている。強引にこじ開けられるだろうが、それをすると痕跡が残ってしまうだろう。 「んじゃ甲斐田さんお願いしますー」 「しかたありませんね」 変態に隙を狙われ続ける千晴なりの用心だろうが、変態たちには通用しない。 甲斐田がポケットの懐から取り出したのは、何の変哲もない針金。どういった理由で針金を常備しているのか。仕事柄という理由では常日頃持っているのは納得しづらい。長年の経験と一応ごまかすことにする。 「当本人が現れる可能性は?」 鍵穴をいじりながら尋ねる甲斐田の質問に、赤松は淡々と答えた。 「それはないかもー坊ちゃん今日は友達と映画見に行くって言ってたから」 友達。その単語で連想されるのはあの人を憎んだことがないような純粋さに満ち溢れている子供。桜井君だったか。 何故貴様ごとき青臭い餓鬼が俺らのアイドルと映画なんて見に行ってんだ。俺だってまだ行ったことないんだぞ。同時に舌打ちをして輪郭がうすらぼんやりしている桜井君に敵対心を燃やした。 「開きました」 物の数十秒で鍵の解除に成功した甲斐田に賞賛の拍手がかけられる。何故その手際の良さをパンツにしか捧げないのだろう。無粋な質問は功労者には送るべきではない。

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