仕事終わりで遅めな予約時間に、ギリギリ間に合った俺たちは、通された席についた。 「間に合ってよかった〜。ごめんな、オズ。いつも準備遅くって。今度はちゃんと余裕持って準備するから！」 「お前毎回そう言ってるだろ」 「あはは……返す言葉もございません……」 今日もご多分に漏れず、毎回と言って良いほど、出かけるたびにする同じ会話を繰り返す。 セルジオのために、2人で出かけるときはあらかじめ少し早めの時刻を出発時間に設定する癖がついたが、それもまた2年目と考えると少し嬉しいような気がしたので、申し訳なさそうに苦笑するセルジオの頭を撫でる。 「まあ、今日は記念日だしな。大目に見るよ」 そんな俺の言葉に、ありがとう、と返したセルジオは、今度は嬉しそうに話し出す。 「俺このレストランずっと気になってたんだよ！イエントリア1のハンバーガーを出す店だって有名なんだぜ！」 「お前はほんとにハンバーガー好きだな」 「そりゃあね、俺のソウルフードだし！」 ニコニコと嬉しそうに話すセルジオに、この店を選んで正解だったな、と確信した。記念日に訪れるレストランはもっと豪華な店でもいいだろうと思っていたが、彼の好物が売りのこの店を選んで正解だったようだ。 喜ぶ恋人の姿に、心を和ませていると、ウェイトレスが食事を運んで来た。 「お待たせしました。チーズバーガー&スイートポテトフライのプレートと、旬野菜のパスタでございます。」 と、にこやかに説明するウェイトレス以上に笑顔で食事を前にしたセルジオは、胸を躍らせた様子で手を合わせた。 「うわああ〜すっごい美味しそう！ なんかお洒落だ。まずハンバーガーが開いて出てくるのがすごい！ 新鮮さとジューシーさが一目でわかる！！ いただきます！」 セルジオは、早速ハンバーガーを組み立てて、大きく頬張った。即座に目を輝かせる彼に、聞くまでも無く答えがわかる質問を投げかけてみる。 「どう？」 「おいしい！！ そこらのファストフードと違ってジャンキーな味がしない！ ハンバーガーはこの安っぽい感じこそがうまいと思ってたけど、この上品な感じもすっごく美味しい！！」 美味しそうに頬張る恋人の姿に、自然と頬が緩むのを感じつつ、自分も食事に手をつけた。 セルジオはハンバーガーに夢中になり、しばらく大人しくしていたが、また感嘆した様子で、声をかけてくる。 「オズ！ これ食べてみろ！ 」 と、綻んだ顔で、差し出されたのは、フライドポテトだった。 「これ普通のフライドポテトじゃなくて、さつまいもだ！ 初めて食べたけどほんとに美味しいから、オズも食べてみて」 嬉しそうにそう言ったセルジオの言葉通り、彼の手から食べたフライドポテトはいつもより美味しく感じた。 「おいしいな。今度家でも作ってみようか。」 「それいいな！ 楽しみだ」 思いつきの提案に、瞳を輝かせて食いついてくる姿は、どうにも可愛らしくて、自分も笑顔になった。 セルジオと一緒に食事をすると、一人の時とは比べ物にならないほど美味しく感じる。 美味しそうに食べる彼をいつまでも眺めていたい。そんなふうに思っても、皿の上のものはだんだんと減っていく。それでも、ご馳走様でした、と満足そうに手を合わせるセルジオを見ると、満たされた気分になった。 食事を終えた後も、嬉しそうな雰囲気を纏ったまま、惜しみなく向けられる可愛らしい笑顔を見つめながら、手を繋いで帰路についた。