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腕の中で眠るセルジオが、僅かに身動ぐのを感じ目が覚めた。さきほどの情事の痕跡を僅かに残しつつ穏やかな寝顔を晒す彼をぼんやりと眺める。彼の茶色の髪に手を伸ばし指を絡めると、いつもと同じふんわりとした感触が伝わってきた。柔らかくて優しいその手触りは、いつまででも触っていたくなる。 そろそろセルジオも起きるだろう。その前に朝食でも準備しておこう。そう思いついた俺は、静かにベッドから抜け出した。 キッチンの窓には、もう随分高い位置からの日が差し込んでいて、朝食と言うよりは昼食と言った方が相応しい時間帯だ。 冷蔵庫にあるもので手軽な食事を作る。パンケーキとハムエッグ、サラダとフルーツ。いつもより少しばかり豪華な朝食だ。仕上げにコーヒーを淹れているとき、寝室からセルジオが出てきた。 セルジオは疲労感を貼り付けた顔で何か言いたげだったが、彼が口を開く前に先手を打つ。 「おはよう、セルジオ。ちょうど準備が出来たところだ。座って」 彼は一瞬不満そうな表情を作ったが、素直に頷いて、洗面所に行った後すぐに席に着いた。 「なんか豪華だ」 「昨日と今日と、無理させたから。お詫び」 「こんなんじゃ買収されてやらないぞ」 ちらっとこちらに視線を寄越し、彼はいただきます、と手を合わせるとパンケーキを口にした。 「うまっ、やっぱオズのパンケーキ好きだ……っあ」 ほんの数秒前の言葉を思い出したのか、しまった、というような顔をして今度は黙って手を動かす。 「今日はどこか出かけようか。体辛いだろうし、エスコート、しますよ?」 少しふざけて、片手を胸に当て、もう片方を差し出すようなポーズをとって誘ってみると、物言いたげな目をしながらも彼は軽く頷いた。 「どこ行きたい?」 「海」 さほど考える時間をとらずセルジオはそう答えた。彼は自然の景色を眺めるのが好きだ。今日は晴れているし、夕陽が海に沈んでく様子を見に行くのがいいだろう。 「じゃあ、海に夕陽、観に行こう?」 「うん」 なんだか酷く可憐な微笑みを向けられて、ドキッとした。どうしてだろう。そのまま彼の顔を見つめるが、彼は気づいていないようで、黙々と食事を平らげた。

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