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16 :ヘイデン視点

とある休日の昼下がり。ヘイデンはアンドロイド研究所を訪れていた。 ここの研究員のエシリルという男が、見せたいものがあると言って自分を呼びつけたのだ。この男は、ヘイデンがヒューマノイドを購入する際の、カスタマイズをいつも担当していた。 新しいタイプのヒューマノイドが出るたびに、ここを訪れていたため、エシリルとはある程度交友がある。 待合室で数分エシリルを待っていたが、すぐに男が呼びに来た。助手らしき男に連れて行かれたのは、エシリルの研究室だった。ここに入るのは初めてだが、想像した通りの煩雑な部屋だ。部屋中に資料やヒューマノイドのものと思われるパーツが転がっており、一見するとバラバラ殺人の現場のようだ。 「それで、なんなんだい? 見せたいものというのは」 社交辞令など必要ない、と、エシリルに視線を投げかけ、話の本題に入るよう促す。 「まあまあ、そんなに焦らずに。今回はほんとにすごいんですよ。とりあえずお茶でも飲みますか?」 「いや、結構だ」 「そうですか、でも私は飲みたいのでちょっと待っててください」 そういうと、エシリルは自分の分の茶を用意し始める。こいつは異様にマイペースな男だと思う。こういう少し変わったやつの方が研究に向いているのだろうか、と考えていると、彼は分厚い資料とお茶を片手に戻ってきた。 「さてと、それでは本題ですね」 椅子に腰掛けたエシリルが、茶を一口のんで、話し始めた。 「最近新しいヒューマノイドが完成したんですよ。 まだプロトタイプの段階ですがね、これは間違いなく最高傑作ですよ」 「タイプは何だ?」 「そこなんですよ! 今回のはタイプにとらわれないオールマイティなヒューマノイドなんです。まあ既存の、特定のタイプに特化したモデルには負けるでしょうが、カスタマイズ次第でなんでも出来ます」 身を乗り出し、興奮したように話す目の前の男に、若干気後れしたが、会話を続ける。 「なるほど、つまり労働力として肉体労働をさせながら、恋人タイプとしてセクサロイドの役目も果たすことができる……というようなことか」 「その通りです。それに、沢山のヒューマノイドを所有されているヘイデン様なら、すでにお感じになっていられるでしょう問題、代わり映えしない性格も今回は改善されているんですよ」 「それは……どういうことだ?」 「今回のヒューマノイド一体一体が、それぞれ個性を持つということです。今までのヒューマノイドも、カスタマイズによってある程度の個性はでましたが、所詮はプログラムされた応答でしかありません。人工知能と言っても唯一無二の個性を作り出すことはできない。期待された反応をするように作られていただけなのです」 自分にも思い当たることがあった。所有するどのヒューマノイドも結局はただのロボットであり、愛情を向けられるようなものではないのだ。 初めの頃に購入した恋人タイプのセクサロイドは、最初の頃は楽しく、恋人のような甘い時間を過ごしたが、当たり障りのないパターン通りの反応だけを示すそれに嫌気がさした。人の形を精巧に象った、 ただのダッチワイフとしか感じられなくなった。今では気の向いた時に、まるで肉便器かのように扱う程度でしか使用していない。 セクサロイドとしての機能しか持たないヒューマノイドは、新たな主人をつけることもできず、労働力にもならないため、処分するしかない。 自分は、一つに飽きたらまた次を、と次々ヒューマノイドを購入してはいるものの、未だ1つも処分はしていなかった。人工知能と言えどもある程度の意識のあるものを処分するほど、無慈悲にもなれないのだ。 自分でも気づかぬうちに、生涯を共にできるようなパートナーを欲していたのかもしれない。ヒューマノイドに依存してしまった今、生身の人間と連れ添うことを考えることは思いつかなかった。

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