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今回のヒューマノイドは、理想に近いのかもしれない。しかし、1つ懸念がある。それを確認してみなくては。
「個性があるということは、自我があるということだろう?主人となる人間に歯向かったりはしないのか?」
「プロトタイプの段階なので、確実なことはまだ言えませんが、その点は問題ないと思います。従来のヒューマノイドと同じように、主人となる人へ向ける核となる感情や、性格はプログラムしますから。ただ、そこから生活していくにつれて得ていく情緒が非常に人間的なんです」
とエシリルは答えた。
その答えを聞き、新型モデルの購入を決定した。
「それなら問題なさそうだ。それで、プロトタイプだと言っていたが、正式な発売はいつになるんだ?是非とも一体購入したいと考えているのだが」
尋ねると、エシリルはニッコリ笑うとこう述べた。
「今日ヘイデン様をお呼びしたのはそのためなんですよ。いつもご贔屓にしてくださるヘイデン様に、プロトタイプにはなりますがこの新モデルのヒューマノイドを贈呈したいと考えているのです」
怪しいくらいに笑顔を絶やさず、にこやかに話す彼は、明らかに何かを企んでいる。
「……あまりに話が良すぎるのではないか? 本当は何が望みだ」
「あらら、バレちゃいましたか。実はまだ実験段階なんですよ、このモデル。どのように感情を獲得していくのかは、実際に主人と暮らしてからでないとわからないもので……ヘイデン様には、新モデルの経過報告をしていただきたいのです。どうでしょう? 引き受けていただけますか? もちろん実験期間が終わったらヘイデン様のヒューマノイドとなりますので、好きに使ってもらって構いません」
特に考える間も無く答えは出た。一定期間報告を続けることくらい、どうと言うことはない。
「いいだろう。取引は成立だ」
「ありがとうございます。ヘイデン様には1週間に1度の書類報告と、2〜3週間に一度の研究所訪問をお願いします。お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします」
「問題ない」
話はトントン拍子に進んでいった。
「次はカスタマイズのお話ですね。ここが1番楽しいところです! 今回は、プロトタイプのため外見はすでに決まっているのですが、機能と性格はカスタマイズできます。ヘイデン様はこのヒューマノイドにどのような機能をご所望ですか? 力持ちの労働力タイプや尽くしてくれる給仕タイプ、もちろん恋人タイプもありますし、複合させたり、なんでも出来ますよ」
少しばかり考えたが、すぐに答えは出た。
「そうだな、労働力も給仕もすでにいるからな、恋人タイプがいいだろう」
「かしこまりました。恋人タイプということで、やはり性行為に特化したカスタマイズがオススメですがいかがです? 初めから敏感だったり、回数を重ねるごとに感じやすくなっていくようなのもありますし、淫乱、お淑やかなどいろいろな性格も付けられますますよ」
「自分で開発していく感じが燃えるからな、後者のやつで頼む。あとはそうだな、淫乱なのには飽き飽きだから、こう、清楚な感じにしてくれ。恥ずかしがったりしてくれると男としてぐっとくるものがある」
「なるほどー、了解です。それにしてもこんなところでヘイデン様の性癖を聞くことになるとは」
おどけた調子でエシリルは笑った。
それから30分間ほど、ヒューマノイドの性格や、体質の細かい部分について話し合った。最後に設定の確認を一通りした後、エシリルは言った。
「さて、これでカスタマイズは終わりですね。新モデルのプロトタイプは一週間後にご自宅へお届けします。いつもと同じように、最初の起動で名前を与えて、主人があなただということを記憶させてくださいね」
「ああ。では、また1週間後に」
次のヒューマノイドへの微かな期待を胸にしながら、私は研究所を後にした。
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