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「では、次に、読解力と簡単な記述もテストしましょう。この文章を読んで、下の質問に回答して下さい」
そう言って渡されたのは一枚の紙。上半分に文章が書いてあって、下には問題が3つ。文章を読むのは初めてだけど……大丈夫そう。目を通した一文目はちゃんと理解できた。
どんどん読み進めていくうちに、ヘイデン様とエシリルさんが話し始めた。聞き耳立ててるみたいでちょっと悪い気がしたけど、好奇心には勝てず、しっかり2人の会話を聞いていた。
「説明書、お読みになりました?」
「ああ、睡眠と栄養が必要なんて、まるで人間みたいだな」
「今までで一番人に近いアンドロイドですから。それらを欠かすと不具合が発生するので、出来るだけ規定通りにお願いします」
ちゃんと文章を読んでるフリをしながら、会話を盗み聞くというちょっと高度な技を発揮しているのに、あまり面白いことを話していないのが、ちょっと残念だった。文章の方もさして興味のそそられるものでもない。この研究所と、アンドロイドの発展について簡単な文章で説明されている。問題も、設立者は誰で、いつ最初のアンドロイドが完成したか、などごく基本的なもの。
「このタイプのヒューマノイドを発売するにあたって、ヘイデン様の会社に栄養タブレットの製造をお願いしたいと考えているのですが……」
「お前……それも見越して私にこれを頼んだな」
「まあまあ、いいじゃないですか。代わりにこんなに美しいヒューマノイドが手に入るんですから」
「確かにそうだな。容姿も性格も今までで一番だしな」
思わず口元が緩みそうになった。ヘイデン様は僕が一番だと思ってくれているみたい。ご主人様に気に入られるのは、ヒューマノイドの本懐だ。
「作り上げた私でさえ、思わず見惚れてしまう出来栄えですからね」
「お前の美的感覚が普遍的で良かったよ」
「……その他の感覚は異常だと言ってます?」
……ちょっと面白いかも。この2人は仲が良いのかな? ふと、僕にもいつか友達ができるといいな、なんて思った。
「私が特に気に入ってるのはセシルの目だな。あの翡翠色の瞳に見つめられると吸い込まれそうになる」
「ああ、瞳は彼の一番美しいパーツでしたからね。気に入っていただけて光栄です」
ヘイデン様は僕の目が好きなのか……知らなかったな。これからはもっと目を見て話してみよう。
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