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第11話

由里は呼ばれるまま父の隣に座る。 テーブル…慣れない場所、いつもは台所で隠れながら残りものを食べているような生活だから… 「はい、典之さん」 まず父を優先する義母… 「ありがとう、うまそうだ…」 「はい、ヨシヤス、残さないでね」 滅多にみせない優しい口調で由里に大盛りのごはんを渡す義母… これも義母のさりげない嫌がらせ… 「は、はい…」 いつも鍋にこびりついたようなご飯を少ししか食べていない由里… いきなりこんな大盛りを食べれる訳がなく… 義母はわざと大盛りにして、残すなと付け足したのだ… 「しっかり食べて大きくなれよ、父さんの子だ、ぜったい背はのびるからな…」 父は悪気なく言う。 「いただきます…」 頷きながら手を合わせる。 がんばってごはんを減らそうとおかずにはあまり手をつけずにいると、父におかずも食べろと勧められ… やはり、ご飯全部は食べきれない由里… 半分くらいでお腹いっぱいになってきた… 「ヨシヤス、もういいのか?残したらもったいないぞ」 「う、うん…」 「あまり食べない子でしょう、好き嫌いが多くて…私が強く叱れないから甘やかしてしまっているのかしら…」 ここぞとばかりに義母が食べさせていないことを隠す為、由里が食べないことを伝える。 嘘ばかりの内容も聞き流すしかできない由里… 主に義母と父が会話をしていて、割って会話などできない… 由里は黙って食べ続ける。 「……」 苦しくても必死に口へ運ぶが…これ以上お腹にはいらない… だんだん涙目になってくる由里。 「ヨシヤス、食べれないのか?」 不意に優しく声をかけてくる父… 「……」 こくんと頷くしかできない由里。 「なら、今日はいいぞ、そんなツラそうに飯を食ってもおいしくないだろ、残りは父さんが食べてやるから…」 頭を撫でながら優しく言う父… 「あ、ありがとう…お父さん」 ほっとするようにお礼を言う。 「もう、典之さんまで甘やかすんだから…」 義母が水をさすように言う… その声に固まる由里。 「まぁいいだろ、今度はもう少し食べれるようがんばろうな…父さんはヨシヤスの成長が楽しみなんだ」 優しい父の言葉に、嬉しくて涙がでそうになる由里。

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