15 / 129
第15話
「…ありがとう」
切なく頷く…
「…ヨシヤス、かあさんと仲良くやれているか?」
不意に聞く父…
「…うん、義母さんは優しくしてくれるよ」
心配はかけられないから…
絶対にいじめられているなんて言えない…
「ならいいんだ、お義祖母さんにはキツイことを言われることもあるだろうけど…我慢できなくなったらいつでも電話してきたらいいんだからな…」
義祖母は父を嫌っているため、今日も姿を見せていない…
だから由里にも辛く当たることは分かっている父…
「うん、大丈夫だよ、ありがとう…お父さん」
勝手に電話を使うことなんか出来ない…
頼んでも義母が許してくれない…
しかし、父の前ではいい母親を演じる義母だから…
由里を虐待しているなど思いもしないのだ。
「…なら、もうひと汗かいて戻ろうか」
立ち上がりながら言う父。
「うん」
頷いて再びまたしばらく卓球をして過ごす。
由里にとっては父との時間は夢のようで…あっという間に時間が過ぎてしまう。
家の中に戻った父親と由里…
夕食の時間まで、テレビを見て過ごす。
そこへ義母が声をかけてくる。
「ヨシヤス、ちょっと手伝ってくれる?」
優しい声で呼ぶ…
「は、はい…」
びくっとして答える由里。
「えらいな、手伝いできるのか…」
優しく頭を撫でる父…
「…うん、行ってくる」
「ありがとう」
やってきた由里に優しく声をかける。
父の前では優しく接する義母…
それが余計恐い由里…
笑顔の中にどれだけ怒りが隠されているのか…
それが恐くて…
びくびくしながらついていく由里。
台所の奥に入って父の姿が見えなくなると、急に義母は豹変する。
由里の髪をぎゅっと掴んで、怒りに変わった顔を近づけ…
「いい加減にしなさいよ、典之さんに甘え過ぎなんだよ、分かってるわね」
父に聞こえないよう、耳元で小声にして脅すように言う義母…
「…ごめんなさい」
ともだちにシェアしよう!