17 / 129

第17話

「…さ、入ろうな。お前、怪我増えてないか?」 小柄な由里の身体には擦り傷が痛々しい… 「え…」 「背中にもこんなアザ…」 そっと触れながら言う。 「こ、これは、ぼくが…納屋で遊んでた時に、農具が倒れてきて打ったんだよ…ぼくが悪くて…」 義母に言われたとおりの嘘を言う。 自分に言い聞かせるように… 「…ヨシヤス、気をつけないとダメだぞ、農具だって一歩間違えば命を落とすんだからな…」 真剣な顔の父… 「…はい」 俯いて頷く由里… 「父さんは心配なんだ、いつも傍にいてやれないから…でも、父さんはヨシヤスのことを信じている、危ないことはしないようにな…」 優しく言葉にする父… 「はい…ごめんなさい」 心配をかけたらいけない…すぐ謝る由里。 「よしよし、ちゃんと謝れる子はいい子の証拠だ。さて入ろうか、今日すりむいた所はしみるかもな…」 すっと明るい表情をして、由里の手を引く父… 「だいじょうぶ…」 頷いて素直に嬉しそうにする由里… ここは義母に見られていないから… そう、父との幸せな時間はあっという間に過ぎてしまう。 風呂のあと、すぐ部屋に布団をひき、父と一緒に横になる由里… 父は、由里が眠るまで色々な話しを聞かせてくれるのだ… しかし、いつも義母たちに働かされて寝るのが夜11時過ぎだから…こんなに早くは寝付けそうにない… それでもあまりに父を独占していると義母が許さないから… 由里は早いうちに寝たふりをする。 本当はいつまでも父の話しを聞いていたいのだけど… 由里が嘘寝をはじめて少しすると、父はすっと布団から出て行く… 義母のところへいくために… あんなに恐い義母だけど… 父は大切にしているから… 絶対に逆らえない… 義母のことも告げ口なんかできない… 追い出されるのは、ぼくかもしれないから… 親指の付け根を噛みながら、独り寂しさと胸の痛みに耐える由里…

ともだちにシェアしよう!