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第17話
「…さ、入ろうな。お前、怪我増えてないか?」
小柄な由里の身体には擦り傷が痛々しい…
「え…」
「背中にもこんなアザ…」
そっと触れながら言う。
「こ、これは、ぼくが…納屋で遊んでた時に、農具が倒れてきて打ったんだよ…ぼくが悪くて…」
義母に言われたとおりの嘘を言う。
自分に言い聞かせるように…
「…ヨシヤス、気をつけないとダメだぞ、農具だって一歩間違えば命を落とすんだからな…」
真剣な顔の父…
「…はい」
俯いて頷く由里…
「父さんは心配なんだ、いつも傍にいてやれないから…でも、父さんはヨシヤスのことを信じている、危ないことはしないようにな…」
優しく言葉にする父…
「はい…ごめんなさい」
心配をかけたらいけない…すぐ謝る由里。
「よしよし、ちゃんと謝れる子はいい子の証拠だ。さて入ろうか、今日すりむいた所はしみるかもな…」
すっと明るい表情をして、由里の手を引く父…
「だいじょうぶ…」
頷いて素直に嬉しそうにする由里…
ここは義母に見られていないから…
そう、父との幸せな時間はあっという間に過ぎてしまう。
風呂のあと、すぐ部屋に布団をひき、父と一緒に横になる由里…
父は、由里が眠るまで色々な話しを聞かせてくれるのだ…
しかし、いつも義母たちに働かされて寝るのが夜11時過ぎだから…こんなに早くは寝付けそうにない…
それでもあまりに父を独占していると義母が許さないから…
由里は早いうちに寝たふりをする。
本当はいつまでも父の話しを聞いていたいのだけど…
由里が嘘寝をはじめて少しすると、父はすっと布団から出て行く…
義母のところへいくために…
あんなに恐い義母だけど…
父は大切にしているから…
絶対に逆らえない…
義母のことも告げ口なんかできない…
追い出されるのは、ぼくかもしれないから…
親指の付け根を噛みながら、独り寂しさと胸の痛みに耐える由里…
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